私は繰り返し、新型コロナの主要な感染経路は飛沫や接触ではなく、呼気に含まれるエアロゾルだということを主張してきた。そしてアクリル板やマスクは、エアロゾルの感染を防ぐには逆効果だ、ということも、繰り返し書いてきた。
そして今日の衆議院厚生労働委員会で、2人の議員からこの件に関して質問があった。
宮本徹議員が7:41:50から、青山雅幸議員が8:13:40から、この件について採り上げている。
どちらも、私が何度か紹介した「THE LANCET」の論文が基本になっている。
Ten scientific reasons in support of airborne transmission of SARS-CoV-2
この質疑を通して私が感じたのは、厚生労働省が一度決めた方針を変えることができずに、1年経って新しい知見が出ても、以前の方針を撤回できなくなっている、ということである。
もちろん、日本においては最初は密閉回避ということを言っていた。それなのに欧米の研究者が「ソーシャルディスタンス」と言い始めて、日本もそれに従うようになったのが、最大の間違いだったのだ。
今の感染対策は飛沫防止に偏りすぎていて、さらに「人出を減らす」ということまで、また言われ始めた。昨年末に外出を減らして家に篭もったことが原因で感染爆発を招いたにも関わらず、である。
私はこのブログでは「科学的に物事を考える」ことを基本に記事を書いている。私は博士(経済学)の学位を持っており、社会科学者としての自覚はある。そして、特に長崎のような地方においては、科学ではなく感情で政策が動かされることが多すぎるので、それを少しでも是正し、科学的見地から政策を作る動きを作りたいと思ったのが、このブログを始めた最大の理由である。
「科学的思考」という点では、社会科学も自然科学も変わりはない。私は学部は理学部出身である。大学院から経済に移ったので、自然科学と社会科学双方の基本的な考え方は理解しているつもりだ。
科学的に考えると、新型コロナの感染は、飛沫や接触ではなくエアロゾルによるものだということは、もうほとんど間違いない。心ある専門家はみんなそう思っていると、諸々の発言から私は感じている。長崎大学の専門家もそう考えているから、長崎県においては飲食店の感染防止対策としてアクリル板などの飛沫防止より換気を重視し、そう指導してきたと思っていた。
それが最近、何故かアクリル板とかマスクとか言い出したので、相当落胆しているし、長崎大学への信頼も一気に無くなってしまった(苦笑)。
ここで政府が「この一年間で蓄積された知見によると、感染経路は飛沫や接触ではなく、エアロゾルが中心である。だから、換気だけをとにかく注意して、あとの対策は無理のない程度で構わない」と言えば、どれだけ社会の停滞感が払拭されるだろうか。
正直、現状では国にコロナ対策を収束させる気がなく、各首長は「自分が仕事をしている感」を出せて支持が上がるので、騒動を永遠に続けたいと思っているように、私は感じている。
せめて長崎県だけは、ちょっと前に戻って、アクリル板とかマスクとか言わずに、正しい対策を取って県民が生き生きとした生活を送れることを目指して欲しい。感情だけで動くのは、もうやめよう。