2018年5月15日火曜日

MICE施設計画は一度立ち止まるべき(2)

前回の続き

前回の話は、「とりあえずMICEの話は一旦止めて、区画整理事業の図面を引き直そう」ということだった。

今回は正面からMICE事業を分析してみる。

そもそもMICE事業に反対する人は、何故反対するのか。私にはそれが理解できない。駅前の一等地に、他に何か作りたいものがあるから、MICE施設を作られては困る、というのであれば理解もできるが、それもないのだから、市が計画することにはとにかく反対、と言っているようにしか思えないのだ。

よく聞くのは「採算が取れるはずがない」という意見だ。しかし、MICE施設は公設民営であり、採算が取れるかどうかは市に関係することではない。儲かれば事業者が儲かって市に税金を沢山払ってもらえる、損すれば事業者がかぶるだけだ。

わかりやすい話をすれば、ジャパネットがサッカースタジアムを作るが、儲かると思うから作るのであり、儲からなければジャパネットが損をかぶるだけのことだ。失敗したからといって、市が尻拭いする必要はないし、そうなると思っている市民もいないだろう。ジャパネットだって最初から失敗するつもりで事業に手を上げたわけではないはずだ。

MICE施設だって同じこと。失敗すれば事業者が損をかぶるだけのことで、市が尻拭いをする必要はどこにもない。事業者も最初から失敗するつもりで手を上げたのではないはずだ。

但し、この部分について私は事情を知らないので、強く言えないところがある。というのも、MICE事業者の選定が「1者入札」だったことが気にかかるのだ。

公共事業において、入札する事業体が1つになることは望ましくないとされている。それは、談合により工事価格を高くされる恐れがある、ということが最大の理由である。

しかし近年は、そもそも建設費が高騰しているため、入札しても儲からないから、結果的に入札するのが1者だけだった、ということが増えている。

例えば東京都は、小池知事が原則1者入札だった場合には再入札にする、と決めたが、儲からないけど公共性を鑑み渋々入札したのがやっと1者あった、という状況にも関わらず、それを流して工事に手を付けられない、という事例が頻発して、この原則を見直す方向になっている。


長崎のMICE施設についても、やはり1者入札は望ましくないと思う。私がMICE施設に賛成なのも、基本的には採算が取れる事業だと思っているからで、赤字になって税金を垂れ流してまでやることはない。

この前提に立てば、1者入札になったというのは、MICE施設の採算性が怪しいのかもしれない、ということも考えざるを得ない。例えば三菱重工幸町工場跡地は5者の応募があったそうだ。採算が取れるのであれば、応募する企業体はいくつか出てくるのが当然のことである。

仮にMICE施設については採算が取れないかもしれないが、九電工グループが義理で入札したとなれば、それは一度考え直すべきだと思う。今はMICE施設が赤字になっても市は補填しないと言っているが、もし赤字になったら市が補填するという密約があって九電工グループに入札を市側が頼んだとすれば、言語道断である。MICE施設の可能性を信じる私は、そういうことは絶対にないと信じているのだが。

ここまでの話を総合すると、市がやるべきことは、MICE施設の再応募をすることだ。そして、広く業者に呼びかけて、1者入札を回避することである。

もし仮にジャパネットを中心とする企業グループがMICE施設に応募した場合、それでもMICE施設に反対する市民はどれだけいるのだろうか。こう考えると、MICE施設に反対する理由は、単に市に対する不信感だけだ、ということになる。

ジャパネット側から見ても、サッカースタジアム周辺とMICE施設を一体運営した方が、より採算性の高い事業が行えるのだ。


MICE施設に関していえば、もう1つ留意すべきことがある。それは、佐世保のIR施設である。

カジノを含んだIR施設が、佐世保(ハウステンボス)にできる可能性は低くない。もしできるとすれば、幸町の施設以上に長崎のMICE施設の経営に影響すると私は思っている。

そうなれば、これも佐世保のIR事業者が長崎のMICE施設も一緒に運営した方が、県全体として見てもいい方向に動く。やはり、佐世保のIR事業者にも、長崎のMICE施設運営に応募してもらいたい所だ。

今の九電工グループ以外に、ジャパネットグループと佐世保のIR事業者グループを含めた3者が長崎のMICE施設事業者として手を上げれば、MICEに反対する人は大幅に減ると予想される。長崎市は、この方向を目指すべきである。これは強く主張したい。

MICE施設計画は一度立ち止まるべき(1)

ジャパネットグループが三菱重工幸町工場跡地にサッカースタジアムを中心とした新施設を作ることになり、それに関連して長崎市が計画しているMICE施設との機能重複が問題になろうとしている。


私は従来からMICE推進の立場なのだが、とりあえずここは一旦立ち止まって考える必要があると思う。

なぜ立ち止まる必要があるのか、という最大の理由は、本当はMICE施設の本質的な議論ではないのだが、駅周辺の区画整理事業を見直すために、一旦MICE施設の計画を止めないといけない、ということである。


まずはここの記事を参照頂きたい。


今の区画整理事業の図面だと、長崎駅前電停付近の交通量が今以上に増えて、渋滞がひどくなる可能性がある、それをなくすためにも、北側から新長崎駅に来る車は、浦上側沿いの道に誘導しないといけない、という話を、上の記事に書いた。

ここに写真があるので、引用したい。
地元の人なら土地勘があるので、写真を見ればすぐイメージできると思う。



これを見ればわかるが、浦上側沿いの道から駅西口に入る大きな道路が、今の設計では無いのである。そして、何故か川沿いの道と八千代町を結ぶ位置に広い道路が計画されていて(「新しい長崎警察署」と書かれた部分)、駅西口に北から来るとすれば、ベストウエスタンホテル裏の道から入るのだろうか。全く意味のわからない道路配置になっているのだ。


今度はMICE施設の案。見事に駅の西側を建物でふさいでいる。
写真左側にホールとホテル、細い道を挟んで右側が駐車場である。

果たしてこの構造でいいのだろうか。川沿いから駅西口に広い道路を作る必要があるのではないだろうか。


これは幕張メッセの空中写真である。中央の展示場部分と、右側のホテル(ニューオータニ、アパホテル等)は広い道路を挟んで屋根付きの歩道橋で結ばれている。別に展示場とホテルが一体化する必要はない。長崎でも、展示場とホテルの間に広い道路を通して、浦上川沿いから駅に入れる導線を確保すべきだろう。

私が言いたいのはこの部分。道路や建物の工事が始まってから、道路の配置を変える、というのは、ほぼ不可能なのだ。だから、ここは一旦立ち止まって、計画を練り直して再度入札にかける、という手順を踏むべきだと思う。

もちろん市が、最初の設計が悪かったから設計しなおした、とは言う必要はない。次の入札の時に、しれっと図面を書き換えたものを出せばいいことだ。

ここに続く