2017年5月9日火曜日

十八銀行が福岡銀行傘下に入ることの最大の問題点は何か


本日(2017年5月9日)付の日経新聞に、親和銀行と十八銀行の債権を他社に譲渡することで、経営統合への道筋をつける、という記事が出た。

ふくおかFG、長崎で融資シェア下げ交渉へ 十八銀と統合で


十八銀行と親和銀行との経営統合は、県内でのシェアが高まりすぎて競争環境が阻害され、金利が高止まりをする、という理由で公正取引委員会から承認を得られず、合併交渉が進んでいなかった。いよいよこれで話が先に進むようだ。


ところで十八銀行と親和銀行の合併およびふくおかフィナンシャルグループ入りは何が問題なのか。融資先企業からの視点で考える。

今問題になっているのは、合併により競争がなくなり金利が高止まりする、ということだ。現場の感触からすると、これは間違いなく起こる。

実際にこの混乱の乗じて、現在肥後銀行と北九州銀行が県内で強烈な営業攻勢をかけている。十八銀行より低めの金利を提示し、それにつられて十八銀行も金利を下げる、ということが現実に起こっている。もし仮に競合がなければ、十八銀行の金利が高止まりするというのは、ほぼ間違いない。

しかしこの例を見ても、十八銀行の競争相手は必ずしも親和銀行だけではない。仮に十八銀行と親和銀行が経営統合されても、離島などの地域を除き、今以上に肥後銀行や北九州銀行などの営業攻勢は強くなり、それなりの競争環境は維持できると思う。


このこと以外に、県内経済にとってより重要な問題が経営統合によって引き起こされることを説明したい。

十八銀行まで福岡銀行傘下に入ると、県内資本の地方銀行がなくなってしまうのだ。親和銀行はすでに福岡銀行傘下であるし、長崎銀行も西日本シティ銀行の支配化にある。現状、十八銀行が最後の砦になっている。

銀行が福岡県を基盤とする勢力の支配下になると、どうなるのか。親和銀行と長崎銀行の今の融資姿勢から考えてみる。この「今の融資姿勢」というのは、あくまで融資先企業としての私の肌感覚であることはご了承頂きたい。

親和銀行にせよ長崎銀行にせよ、福岡の銀行に「救済された」という側面が強い。だから両行の行員は「助けてもらった」という意識があり、親会社側は「助けてやった」と思っている。そのため、長崎の銀行側は親会社側の言いなりになっている。

親会社側から見たらどうであろう。自分たちの給料は、福岡県内で十分稼いでいる。だから長崎の銀行では利益が上積みされれば良く、赤字になるのは論外。無理はしない、という意識になる。

ここで、信用力の低い企業に対する融資を持ち込まれたら、本部の審査側はどう考えるだろうか。「無理はするな。断れ。」となる。実際に融資を受ける立場から見ると、そうなっているようにしか見えないのが現状だ。極端なことを言えば、長崎県内では優良企業にだけ融資しておけばいい、ということになるのだ。

こうなると長崎県側としては大変である。「信用力の低い企業」には、「伸びしろのある企業」「伸びるかもしれない企業」も含まれる。そういう企業にお金がまわらないと、県内では新しい企業が伸びずに経済が停滞してしまうからだ。

今の十八銀行であれば、「県内企業が伸びないと銀行も伸びない」という意識がある。本部の審査側も、支店の担当者がそう言って迫ると、無下に断れない。審査する人間だって、県内企業が伸びないと自分の給料も稼げないからだ。

ところが親和銀行や長崎銀行になると、審査側に福岡の銀行からの出向者がいたりする。審査側の給料は福岡の企業からの収益で払われている。別に長崎の企業が伸びなくてもいいし、それよりも融資が焦げ付いて銀行の業績が悪くなることの方が、気になる。

支店の担当者にしても、とりあえず親会社の言う通りにしていれば、自分の将来の給料は保証されていると考えている。安定第一である。そもそも地方銀行に就職しようとする動機は何だろうか。県内で安定した就職先として、公務員か銀行か、という理由の人が多数なのではないだろうか。

この話は「可能性がある」とか、たらればの話ではない。繰り返すが、融資先企業として親和銀行や長崎銀行と交渉する企業責任者から見た、現在の実感である。


仮に十八銀行と親和銀行が20店舗分程度の店舗移譲と債権譲渡をするとした場合も、その相手がどこになるのかが、最大の問題である。長崎銀行では、全く意味がない。肥後銀行や北九州銀行になっても、あまり面白くない。

一番いいのは、十八銀行の経営陣の誰かが、十八銀行から飛び出し、債権譲渡の受け皿となる新銀行を作ることだ。そして十八銀行の行員から希望者を募って、新銀行で採用する。単独で新銀行を作るのは難しいだろうから、その時は肥後銀行と鹿児島銀行で作る九州フィナンシャルグループや、北九州銀行が属する山口フィナンシャルグループの傘下に入るのは仕方がない。但し、主導権はあくまで長崎県側が持つ銀行にならないと、何の意味もない。


経営統合問題に関する長崎県や経済団体側からの意見が私には聞こえてこないが(そういう人と直接関わりがないので、耳に入るとしても新聞報道位であろう)、長崎県経済の将来のためにも、もっと地元が声をあげないといけない状況にあることを、県民全体が自覚しないといけないのだ。

2017年5月3日水曜日

香港で長崎県産びわをPRしよう

日本からの農産物輸出が徐々に増加している。その相手国として、香港の重要度は高い。

香港は食糧自給がほぼ不可能であり、かつ中国産農産物の不信感が根強い。そのため、日本からの農産物輸入も増加している。農産物に対しての輸入規制も緩く、日本からの輸出相手国としてはハードルが低い。

長崎県産の農産物も多く輸出されている。実際には福岡の青果市場から香港に輸出されていることが多く、生産者が自分で生産したものが香港で売られていることを、ほとんど知らないのが現状である。今の季節だと、じゃがいもや人参などの野菜が、博多港から香港に輸出されているのだ。

長崎県産の農産物といえば、代表的なものとしてびわが挙げられる。国内での生産量は一位であり、香港で売られているびわも、ほとんどが長崎県産である。

では、香港でびわは売れるのだろうか。
実は相当売れているのだ。


















これは先日香港に行った時に撮ったものだ。
スーパーやデパートだけでなく、こういう小さな果物屋にも日本産びわが並んでいて、それはほぼ長崎県産なのである。

ところが、香港では「びわ」と「長崎」という地名が結びついていない。香港でも長崎という地名は浸透しているのであるが、それがびわと関連させて認識されていないのは、残念である。「あまおう」と「福岡」位の関連性には持って行くことを目指すべきではないだろうか。

そのためにも、観光と農産物を結びつけたプロモーションが非常に大事である。長崎に観光で来てもらって、びわを食べてもらう。もちろん、長崎側でもびわを食べてもらったりびわ農園を見学できるような受け入れ態勢は必要だ。現状何もやっていないに等しいので、香港での長崎県産びわの売れ方を見ると、非常にもったいないことだと思う。