2015年11月5日木曜日

県庁跡地は公園に

富山へ行った話の続き。

金沢で行われた学会に参加するついでに、新潟、富山、金沢、福井の街を見てきた。
今回は金沢の話。

金沢は文化を中心としたまちづくりを行っていることで有名である。
金沢大学の先生の話を少しだけ聞いたが、「中心部にあった石川県庁の跡地は公園になっている。中心部の商店街は寂れてきているが、文化によって人を集める方針でまちづくりを行っており、少しずつ人が集まっている実感はある」とのこと。

石川県庁跡地に全くハコモノがない訳ではないが、敷地の多くは公園になっている。
石川県庁HPへのリンク

県庁跡地は城跡の真下で、隣には美術館(金沢大学付属小中学校跡地)があり、近くの近江町市場も含めて観光客で賑わっている。

長崎も同じような構図だと思う。城跡はないけど出島跡はあるし、美術館もあるし、築町市場がある。こういう場所を地元の人(実はこれも大事)や観光客が回遊できる環境を作るべきではないだろうか。

現長崎県庁は出島が目の前に見える一等地である。ハコモノを作る必要はない。公園にして、地元の人も観光客も集まる場に育てていくのが一番である。市役所やホールをこの場所に建てるのは、もったいなさすぎるほどの立地の良さなのだ。地元の人は、往々にしてこの立地の良さに気付いていない。


「公園にして人を集める」という発想の効果は、私の家のすぐそばにある眼鏡橋界隈の変化を見ると、痛いほど実感できる。

私は今でも中島側の左岸バイパスは単に土木事業が目的だったと思っている。工事前には、あそこの家を全て立ち退かせて土木事業を行うことには反対だった。

しかし、いざ家が無くなり広々とした空間になると、その予期していなかった効果に驚かされた。空間としての魅力が格段に上昇し、人が集まるようになったのだ。

以前なら家から浜の町方面に行く時に中島川沿いを歩くことはなかったが、今は時々歩いている。中通り商店街の皆さま、ごめんなさい。

また昔なら、わざわざ観光客に眼鏡橋を見に来てとは言わなかったが、今なら自信を持って「眼鏡橋界隈に来て下さい」と言うようになった。

この例から言えるのは、私自身、身近な場所でありながら、その場所の魅力や可能性がわかっていなかったということである。


県庁跡地も同じことだと思う。あの場所の魅力に気付いている市民・県民が、どの位の割合でいるのだろうか。考えもしなかったという人は、是非県庁に足をはこんで、建物に入ってこっそり出島側の窓から出島を見て欲しい(って、県庁に入ってもいいんですよね?)。この場所に市役所を建てるなんて、もったいなさすぎる。


近くの商店街の人は、どうしてもハコモノを作って欲しいと言っているようだが、ちょっと発想を変えた方が、街全体として魅力的になる、と私は思う。いかがだろう。

2015年10月28日水曜日

新長崎駅から路面電車の循環線を

長崎駅周辺の区画整理事業に絡んで、MICE施設をどうするのか、ということは大いに議論されている。

ところが、路面電車へのアクセスをどうするのか、ということは全く話題になっていない。

今のところ、現在の長崎駅前電停まで新駅舎から歩いていけ、という話のようだが、ほんとうにそれでいいのだろうか。もっと議会で議論した方がいいと思う。


先日富山に行ってきた。富山は街中の路面電車網を整備して、住民あるいは観光客が街中を回遊しやすい環境づくりをしている。

そして、北陸新幹線開業に関連して駅舎が高架化されたことを契機に、路面電車を高架下まで引き込んで、新幹線から市街地へのアクセスがものすごく便利になった。


珍しく画像をUPする。
これが新幹線改札の内側から改札口を見たところ。改札を抜けた正面に、路面電車の乗り場が見る。


改札を抜けたところ。
正面に路面電車が止まっているのが見えます?


路面電車のホーム。あいにく止まっているのは従来型車両。
大きなスーツケースを持っていても、低床車が来れば、持ち運びは簡単である。


これが外から見たところ。
新型低床車両が新幹線高架の下に入っていく。

そして、この駅周辺の高架下に入る線路は、富山市が整備し富山市が所有している。
路面電車の事業者は民間の富山地方鉄道。いわゆる上下分離方式で、富山地方鉄道はいっさいの自己負担なく、富山駅の高架下への乗り入れを実現できた。

これだけではない。富山では、市街地を循環する路線を、やはり上下分離方式で富山市が整備し、さらにそこを走るための低床車も富山市が購入。富山駅を出て市街地をまわる循環路線は、すべてが低床車である。そのため体が不自由な人だけでなく、荷物が多い人も、安心して路面電車に乗ることができる。

私も宿泊したホテルは循環線を4/5位回った場所だったが、循環線だと必ず低床車が来るのがわかっているから、駅から循環線をぐるりと回り、ホテルへ向かった。移動に時間はかかったが、荷物を運ぶのはものすごく楽だった。


これが長崎の 場合どうだろう。

大きな荷物を抱えて、駅前の歩道橋を渡り、電停へと向かう旅行者の姿を見ることは珍しくない。そして、低床車の数は少ないので、高床式の従来車両に、これまた大きな荷物を抱えあげて乗って、まわりの乗客の迷惑にもなる。

こんな状況を放置している長崎市は、観光地としてどういうつもりなのか、疑問の目で見ざるを得ないのが現状である。

長崎駅の区画整理事業を契機に、長崎も富山にならって駅に向かう新線を整備し、低床車を2〜3編成導入すれば、一気に問題は解決する。長崎の場合、市街地の環状路線は完成しているので、それ以上の新路線整備は必要ない。

富山の場合は、路面電車の上下分離方式が日本初の事例だったので、法律を作るために国会を動かしたり、いろいろと大変だったようだ。それを成し遂げた富山市長の熱意は、素晴らしいと思う。

これに対し長崎でこのやり方を実現しようとする場合、もう富山の前例はあるので、そんなに難しいことはない。市長がやるといえば、MICEと違ってこの件に関して議会の反対は少ないと思われるので、あっさり実現するだろう。市長がやるといえば、ほぼ実現する話なのである。

区画整理事業に関わる土木費用に比べれば、新線設置や低床車導入に関わる費用は、全く大きな金額ではない。MICE云々で大騒ぎするのもいいが、もっと市民生活に直結する駅前の路面電車問題に、もっと注目すべきではないだろうか。