2023年11月13日月曜日

金沢の商店街から長崎駅への商業中心移動を考える

 先日、金沢の市街地を歩いてきたので、その感想から。

北陸に住むことになって、北陸の地域経済を考えることが私の主たる業務になった。

私が北陸の経済を考えるにあたっては、九州と対比してみるのがわかりやすいと思っている。石川県・金沢市が長崎県・長崎市で、福井県・福井市が佐賀県・佐賀市に対応する。人口規模的に、ちょうどその位である。


金沢は北陸新幹線開業効果もあって、インバウンド観光客も多く大賑わい、駅は大混雑でホテルも取れない、市内電車を廃止したこともあってバスが大混雑になって色々大変だ、という声が聞こえてくる。

人が沢山来ることによって観光関連業者は賑わっているが、果たして商店街はどうなんだろうか、というのが私の素朴な疑問であった。商店の多くは観光客に依存していないからだ。


金沢市の商業規模に関しては、私は長崎市と同程度だと思っている。金沢は北陸3県から人が集まるという点で、福岡への商業流出に悩む長崎とは性格が違う。長崎より金沢の方が圧倒的に高価格帯のブランド店は多い。しかし中心商店街の広がり方などは、長崎と金沢は同規模、あるいは長崎の方が上だというのが私の認識である。

金沢市の商業施設は、中心商店街である香林坊から片町にかけてのエリアと、金沢駅周辺、そしてその中間部で近江町市場のある武蔵地区に分かれる。長崎市でいえば、浜の町と長崎駅周辺、そして大波止あたりに新大工商店街がある、というイメージだ。金沢にあるデパートは、香林坊に地元資本の大和と、武蔵に元名鉄系のエムザの2軒で、長崎に浜屋と玉屋があるというのと同じ感じだ。もっともそれぞれの店舗規模は全く違うが。

この中心商店街から駅周辺に商業の中心が移っていることが、長崎市の将来を考える上で重要になるかもしれないと私は思っている。金沢市の公示地価の最高点は、香林坊から駅前地区に移っているのだ。長崎市の最高点が今でも浜の町なのとは大きな違いである。


中心市街地に竪町という商店街がある。長崎市でいえば浜市アーケードみたいな位置付けだ。普通ならアーケードになる場所だが、ここはアーケードはなく歩行者天国だけである。日曜日の昼間に歩いたのだが人通りは少なく、浜市商店街とは対照的であった。竪町にはかつてユニーと長崎屋が店を構えていたが、今現在大型スーパーはなくなっている。

そして香林坊にあるデパート大和は、もともとこの竪町の入口にあたる片町にあった。移転後も跡地は「ラブロ片町」という商業ビルになっていたが2014年に閉店、改築して2015年「片町きらら」になった。

2006年に駅ビル「金沢フォーラス」が開業すると(所有者はJR西日本関連会社、運営はイオン系列)、ラブロ片町に入っていたABCマート、島村楽器、タワーレコードなどが閉店し金沢フォーラスに移転するなど、中心商店街から金沢駅地区への商業移転が進んだ。またユニクロが香林坊に移転するなど、「ラブロ片町」はテナント集めに苦労するようになっていた。「片町きらら」にはH&Mが入店しているが、かつて入店していた「ロフト」はやはり金沢フォーラスへ移転している。


こういう事例を見ると、浜の町は頑張っているなと思えるのだが、今後どうなるのかは今の所何とも言えない。私の意見としては、浜の町も「浜町地区市街地再開発事業」をちゃんとやってテナントの床面積を広げないと、金沢のようにどんどん有力テナントが長崎駅周辺に集まり、浜の町に人が集まらない状況が来ると思う。