2018年12月30日日曜日

不安を煽るだけのTPP発効報道はやめよう

2018年12月30日にTPPが発効し、それに関する報道もされている。

TPP発効 価格下落を懸念 海外販路拡大好機の声も


但し、いつものことであるが、国内農家に対して不安を煽る内容が中心である。
長崎県内農家の多くは、農畜産物の関税の撤廃や引き下げで安い輸入品が増加し、国産価格が下落することを懸念している。一方、海外への販路拡大に向けた好機とする声も聞かれた。
もともと日本(農水省)の農政は、「日本の農業は弱い」と過度に主張することで、「弱いのだから保護するために補助金を出せ」というスタンスを崩していない。だから、とにかく「日本の農業は補助金がないと崩壊する」という言い方しかしない。

上記長崎新聞の記事も、見出しは価格下落と海外販路拡大を対等に並べているが、記事を読めば価格下落に対する不安についての内容が圧倒的である。

そもそも関税の低下による輸入増について、客観的に影響を述べる記事がマスコミに出ることはない。『科学的』には、関税の影響よりも為替レートによる影響の方が遥かに大きいのだ。

例えば為替が1ドル120円から80円に変化したとすれば、関税率が50%低下したのと同じ効果になる。実際に為替が120円から80円に変化したことはあるし、その影響で日本の畜産農家が崩壊したという事実はないのだから、関税が多少下がったとしても、急激に日本の農家が崩壊することはない。理屈上は、関税率低下に対する補助金を入れるよりは、円高に対する補助金を出す方が、実効性は高いのである。

上記記事の本文に書いてあるが、輸入牛肉の関税率は現在38.5%、豚肉の高級部位は4.3%である。為替の変化に比べると、影響は少ない。こういう客観的な事実もきちんと報道すべきだ。


次に輸出の拡大については、具体的な話が全く書いていない。これは長崎新聞が悪いのではなく、県農産物輸出協議会がきちんと話をして記事にしてもらうように努力しないといけないことである。

TPP発効に伴う輸出の拡大で具体的に何が期待できるかというと、ベトナムへの青果物の輸出である。

ベトナムは現在、青果物の輸入を原則禁止している。ここを参照頂きたい。これがTPP発効を契機に、日本からの青果物輸入を解禁させれば、日本からの輸出が大きく増えることが期待できる。

長崎県からベトナムへは、現在牛肉が輸出されている。全国の都道府県のなかでは早めに動いている方である。

こういうルートは早く作ったもの勝ちな部分がある。中国への水産物輸出がいい例で、長崎魚市がいち早く中国へのルートを作ったので、中国の輸入水産物市場では長崎県が確固とした地位を築くことができた。

もし青果物の輸入が解禁されれば、牛肉のルートを使って青果物もいち早く売り込むチャンスが生まれる。

以前の記事でも書いたが、長崎産びわは香港でも相当な量が売れている。これを東南アジア各国に広げていける可能性を、TPP発効に期待しようではないか。

例えば現在タイでは日本産びわの輸入が禁止されている。タイもTPPに参加すれば、それを契機にびわの輸入の解禁を迫ることだってできるのだ。


こうした具体的な話を、きちんと報道してもらいたい。

2018年12月11日火曜日

地域航空会社提携により上五島・小値賀航路復活へ

地域航空会社の再編に向けた協議が、一歩進んだという報道が出ている。


この話は元々、現在ANAの実質的傘下にあるORC(オリエンタルエアブリッジ)の面倒をJAL系航空会社に見てもらうために国を巻き込んで起こしたもので、連携の枠組みがすでに出来ているJAL系にとっては何のいいこともなくJAL側が反対していた、という状況だった。

それが、とりあえず九州3社(ORC、AMX(天草エアライン)、JAC(日本エアコミュータ))が業務提携するということで話がまとまったということだ。

ORCにとっては、行き詰まっていた新機種導入の目処がつけられることになり、特に長崎壱岐路線を存続させる道筋ができたので、大きな合意だ。

長崎壱岐路線を運航させるには、現状JAL系の航空会社が導入しているATR42を、ORCが現行のQ200の後継機として購入する方法しかなかった。ところがORCはこの1機だけのためにATR機の整備などを行うのは経営的に不可能であるとし、他に方法がなく故障がちの現行機の更新ができなかった。苦肉の策として現行機と同型の中古機を買うという話まで出ていた状況だった。

もしORCがATR42を導入できれば、現在定期便が運航されていない上五島や小値賀への定期便を復活させることもできる。世界遺産登録で観光客を呼び込みたい上五島や小値賀にとっても、いいことである。

ATRが開発中のATR42-600s機は800m滑走路での離発着が可能である。そのため現在800m滑走路しか持たない上五島・小値賀の両空港への就航も、この機種を導入することで可能になる。

日本には県内両空港以外にも800m滑走路をもつ所は多い。そのためATR社は、日本へのこの機種の売り込みを積極的に行っている。

ATR42-600S機は上のリンク先に書いてある通り、伊豆小笠原諸島においても使用価値がある。そちらにANA系の会社が路線を広げられれば、今回の地域航空会社提携の意味も大きいので、ANA側も熱心に話を進めるだろう。


今回の提携では、同じ便でANA系とJAL系双方のコードシェアも行うようだ。これにより、ORC運航便に乗ってもJALのポイントを貯めることが可能になり、いわゆる「修行僧」と呼ばれる乗客もORC路線に集めることができる。

「修行僧」とは、航空会社の高い会員ステイタスを得ることを目的として飛行機に乗る人である。ANAのステイタス基準は搭乗距離を基準にしたものだけだが、JALの場合は搭乗距離と搭乗回数の両方の基準がある。搭乗回数を目標にする場合は、短距離路線を一日に何往復も乗るのが効率が良く、特にステイタス基準期間末である年末の週末になると、福岡宮崎間を何往復もする人がたくさんいるような状況である。

JACの離島路線も、「修行僧」による搭乗率の底上げ効果は意外と大きい。搭乗回数を稼ぐためのツアーまであるので、ORCとJAL(JAC)のコードシェア実現は、長崎県の離島航空路の搭乗率底上げにも大きく寄与することになる。

さらに大きいのは、JAC運航便にもORCの便名を乗せられることになれば、長崎の離島路線をJACに運航してもらうことも可能になることだ。

上五島・小値賀路線は、長崎空港からより福岡空港からのほうが需要は高い。しかし、ORCは現在長崎空港を拠点にしているため、ORCが運航する場合は一度長崎から上五島や小値賀に飛び、そこから福岡に向かわないといけない。そうすると、長崎からの離島路線便の搭乗率が低く、経営的に苦労することになる。ところがJACは福岡にも拠点を置いている。

今回の提携をもとに、JACに福岡からの上五島・小値賀路線を運航してもらい、その便にORC/ANAの便名を乗せチケットを売れば、長崎空港からの機材を送り込む必要がなくなり、効率的な路線展開ができる。

新機種を導入しても、導入が1機だけだと整備期間中に運航できなくなる。AMXは飛行機を1機しか持たない会社なので、以前は整備期間には運休せざるを得なかったが、ATR導入を機にJAL系航空会社間で整備期間中の機材を融通するシステムを作ったため、現在は整備期間中でも運休する必要がなくなった。

長崎でもJACにATR42-600sを導入してもらい福岡-上五島・小値賀航路をお願いした上で、ORCも同型機を1機導入し、JACの整備期間中にはORCから貸し出せばいいのだ。


今回の事業提携を機に、行き詰まったように見えた長崎の離島路線が活性化されることを期待したい。




2018年12月6日木曜日

長崎駅前のMICE施設は競争力が高い

先日、沖縄のコンベンションセンターで開催されたイベントに参加してきた。

私は国内、海外を問わず展示会や商談会、学会などに参加する機会は多い。そのため、各地にあるMICE施設を利用しているのだが、長崎のMICE施設に関する議論を見ていると、全くMICE施設を利用しない人達が見当違いのことを言っていることが多いと感じる。

一番ひどいのは、「もう全国各地にMICE施設があるのだから、後発の長崎ではイベントを誘致できない」というもの。イベントを誘致できるかどうかに、施設が古いかどうかなんて関係ない。それを言えば、幕張メッセがあるから後発の東京ビッグサイトではイベントが誘致できない、ということになる。そんなことはない。東京モーターショーだって、幕張で開催されていたのが東京ビッグサイトに移った。イベントの開催地は施設の利便性などが重要なのであって、古いかどうかは二の次である。

逆にいえば新しい施設であれば古い施設で発生した問題点を改善したものが作れるので、さらに利用しやすいものになり、競争力が高まる。沖縄コンベンションセンターは古い(1987年完成)ので、そういう意味でも競争力が低くなっていると感じた。


私が今まで利用したコンベンション施設は、いずれも大都市に立地するものであった。今回の沖縄コンベンションセンターは、初めての地方にある施設だ。幸い現地の担当者の方ともお話しができて、地方のMICE施設に求められる機能がどういうものか、ということがよくわかり、参考になった。

結論から言えば、長崎駅前にできるMICE施設は、沖縄のコンベンションセンターと比べても、遥かに競争力は高いということがわかった。



沖縄コンベンションセンターの問題点は大きな部分で3つある。

1.空港からのアクセス
2.食事場所
3.ホテル

それぞれについて説明する。
まずアクセスから。

沖縄のコンベンションセンターは那覇市ではなく宜野湾市にある。那覇空港からバスで1時間近くかかり、これがとにかく不便。

交通アクセス

ここも当然国際イベントを開催する目的で建設された。となると、空港からのアクセスは非常に大事だ。ところが直通のリムジンバスがない。路線バスはあるが、海外からの大きなスーツケースを持ったお客さんに路線バスで来て下さいというのは、どうだろうか。イメージとしては、長崎空港から諌早の陸上競技場まで路線バスで来て下さい、というようなものだ。しかもコンベンションセンターに来るのは観光客ではない。仕事で来るのだ。まずここが大きなマイナス。

それに付随する話にもなるが、コインロッカーがない。空港から直接来た人が荷物を預けられないのだ。荷物預かり場は主催者が用意しないといけない。私が行った時も、大きなスーツケースを持ち歩いている外国人を沢山見たが、そういう配慮をイベント主催者にさせないといけないのは、施設側の問題である。


次に食事場所。
昼ご飯を食べる所がないのである。

東京ビッグサイトや幕張メッセのような、毎日何かのイベントがある所であれば、施設内にレストランが沢山あっても、各店舗の商売が成り立つ。ところがイベントが少ない地方の施設だと、常設のレストランがいくつもあると、経営的に成り立たないのだ。


施設内に唯一あるビュフェレストランは、貸し切りになっていて一般客は入れなかった。まあ、こういうのは運営側の問題になるが、せめて一部は一般客用に解放してもらいたい所だ。


そのためフードトラックが入っているのだが、サッカーの試合で来ているのならいいけど、仕事で来ていてここで食事をするのも、落ち着かない。

ちなみに置いてあるテーブルの脚に砂袋が結んであるが、ここは風が強いので、こうしないとテーブルが飛んでいってしまう。開放的な施設だと、こういう部分で使いにくい。


昼食時間帯には席が足りなくなるので、後ろの噴水のへりなどにも座って食事を取らないといけない。この写真は混雑のピークを過ぎた時間帯だったが、ピーク時には大混雑であった。


後方の真ん中にビルが見えるが、施設を出て食事を取れる場所は一番近くてもここ。見知らぬ土地で昼食時間にここまで行こうというのは、なかなか厳しい。会場では弁当も大量に配られていたが、ゆっくり食事を取りたいと思う人には、厳しい環境だ。


最後にホテル。とにかく近くにホテルがない。一番近い所にあるのはリゾートホテル。いわゆるビジネスホテルは全くない。


コンベンション施設を利用するのは金持ちだけではない。特に大規模な展示会だと、普通のサラリーマンが多数だ。となると、すぐ近くにビジネスホテルが欲しい。

幕張メッセも近くにオータニやプリンスホテルという国内では高級のホテルが立地したのだが、今やプリンスホテルはアパホテルに売却されて、ディズニーランドに向かう外国人客を沢山集めているような状況になっている。東京ビッグサイトの目の前には、最初からビジネスホテルしか建設されていない。という例を見ても、MICE施設の近くにはビジネスホテルがないと、利用者には不便なのだ。


このような問題は、長崎駅前にできるMICE施設は全てクリアしている。長崎のMICE施設に関する議論では、こういう部分も考慮されるべきである。


2018年12月3日月曜日

長崎空港国際線に対する有効な補助金の使い方

前回の続き

長崎空港の国際線利用者を増やすには、その便利さを県民に知ってもらわないといけない。ソウル便の場合、ソウル発が早すぎて、ソウルに宿泊した人が利用するのは苦痛でしかない。補助金を出して利用してもらっても、2度と利用しないと思われる危険性が高く逆効果でしかない、という話を書いた。

批判するだけでは生産性がない。ではどうしたらいいのか、ということを、本稿では述べる。


ソウル便はソウル発が早すぎて、宿泊先から空港に向かうのには厳しいが、ソウル早朝着便であれば逆に利用しやすい、ということを前回書いた。

具体的にはどういう便があるのか。アシアナ航空のHPで検索した結果を以下に示す。

-->
行先 長崎発 ソウル着 ソウル発 現地着
シンガポール 10:15 11:45 16:20 21:55
バンコク 18:20 22:15
香港 15:55 18:55
サンフランシスコ 18:00 11:25
ロサンゼルス 14:40 8:40


-->
行先 現地発 ソウル着 ソウル発 長崎着
シンガポール 23:10 6:35 7:55 9:15
バンコク 23:10 6:35
香港 1:00 5:30
サンフランシスコ 23:30 5:30
ロサンゼルス 23:00 5:20
表が乱れている点はご容赦下さい。うまく行きません(苦笑)。

こうして行き先を示されたら、ソウルに向かう人以外にも乗客を集められそうな気がしないだろうか。特にロサンゼルスは結構いい時間帯になっていると思う。

帰りはみんな深夜便になる。深夜便は最終日まで現地で有効に時間を使うことができるし、帰ってきた日もそのまま仕事に行ってもいいし、ゆっくり休んでもいいが、現地での宿泊を減らせるのでホテル代を節約できるというメリットがある。

行きは確かにソウルでの乗り継ぎ時間が結構あるが、仁川空港は空港内でも時間が潰せるし、一旦入国して短時間の無料観光ツアーに参加してもいい。そこを考えても、長崎から福岡空港まで行って現地に向かうよりは、長崎空港からソウル乗り継ぎで行く方が快適である。

こうしたプランを県内の旅行会社で大々的に売り出せば、それなりの利用者は集まるのではないだろうか。前回リンクを張った記事にあるように、ソウル便の補助金利用申請者が5人、というのよりは、多く集まるはずだ。


続いて補助金の使い方だが、旅行代金5千円割引よりは、空港駐車場無料、のほうが効果は高いと思われる。

前回の記事にもあるように、長崎県内から福岡空港まで車で行って国際線を利用する人も多い。私も時々、福岡空港の国際線駐車場を利用する。ここは24時間1000円なので、5日で5000円かかる。まさに補助金相応の金額だ。

長崎空港駐車場の利用料割引に補助金の5000円を使えば、福岡空港の駐車場よりもっと長い日数分に充てることができる。長崎空港の駐車場であれば、県の補助金利用のためなら駐車料金の値引きも可能だろう。東南アジア方面へ行く人の駐車場利用は3〜4日だろうから、北米行きの人にはもっと長く使わせてあげてもいい。上限15日とかにしても、現在の旅行代金5000円引きよりは同じ補助金総額で多くの人に利用してもらえるのではないだろうか。


県の施策は申し訳ないが実際に旅行をする人の気持ちを考えているとは思えない。できれば私のような案も検討して、長崎空港の国際線利用者をもっと増やせることを願っている。

2018年12月2日日曜日

長崎ソウル便の利用補助金は税金の無駄遣いだ

ちょっと古い話だが、長崎空港発着の国際線利用者に補助金が出るが、特にソウル便の利用者が少ないというニュースが出ていた。

長崎就航2年 ソウル便 伸びぬ邦人客

私もソウルに用があることは無いのだが、トランジットで使えるかもしれないということで一度利用したいと思っていた。

今日、この便に乗ってみたので、その感想を書く。


参考までに、上の記事で重要な部分を引用しておく。
県などでつくる県空港活性化推進協議会と日本旅行業協会(JATA)長崎支部などは長崎-ソウル線、長崎-上海線の旅行商品の代金を先着200人を対象に5千円値引きするキャンペーンを10月27日から11月末まで展開中。ただ、8日時点で長崎-ソウル線の商品に申し込んだのは4人だけ。同室は「ぜひとも利用してほしい」と呼び掛けている。
本稿はこの値引きキャンペーンが無駄なお金だ、と言いたいのだ。


最初にこういう補助金にはどんな効果があるのかを考えてみる。

今回のような一時的な補助金は、一度利用して利用者に良さを知ってもらい、次回以降は自費で使うことにより、価値が生まれる。そう、自腹を切ってでも使おうという気持ちを持ってもらえないのなら、補助金は全くの無駄になるのだ。

補助金が出て安いから利用しよう、安くないのなら使わない、というケースもありうる。その場合は永続的に補助金を出し続けないといけないのだが、果たして補助金を出してまで路線維持をするメリットがあるのか、という別の価値判断が必要になる。今回のケースは違うので、その議論はしない。


なぜソウル便の日本人利用者が少ないのか。長崎から韓国への旅行客が多くないということもあるが、この便の最大の問題点はソウル発の時間が早すぎることだ。引用した記事中にも触れられているが、ソウル発は朝7時55分。空港に2時間前に着く必要があるので、6時頃には空港に着かないといけない。エアソウルはLCCなので時間には厳しいため、ここは絶対条件になる。市内のホテルから空港まで1時間程度かかるので、ホテル発は朝5時だ。そうすると、何時に起きないといけないのか。

入国審査の時に近くにいた旅行客のご婦人と話をしてみると、やはり4時起き5時出発ということだった。

私もホテルを5時前に出たが、これは避けたい。多分タダででも一度この行程を経験すると、もう行きたくないと思うだろう。つまり、補助金の目的を全く果たせておらず、逆効果にしかならない、ということだ。


このソウル便が全く使えないということでもない。ソウル仁川空港はいわゆるハブ空港であるため、ソウルで乗り継いで他の国に行き来する時には使えるのではないかと思う。朝が早いといっても、早朝にソウル着の便から乗り換えるのなら、ちょうどいい時間になることもある。

乗り継ぎで使うと言っても、宿泊を伴う場合はきついな、というのが今回の印象だ。まさに早朝着便限定でしか使えないだろう。トランジット利用で宿泊が必要になることは多々ある。成田空港近くにホテルが沢山あるのも、乗り継ぎ利用者が宿泊するためのものだ。余談になるが、羽田空港が国際化される前も、成田の方がソウル仁川より遥かに多くの人に乗り継ぎ利用されていた。また長崎から海外旅行をする場合に成田で前後泊することはは珍しくなかった。そういう利用者が成田ではなくソウルを使う、というのは、ちょっと勘弁、という気がする。


そうして最後にダメ押しだったのが、長崎空港での税関検査である。

私はこの数年、月1回平均位で日本に入国している。そして、今まで一度も税関で荷物を開けろと言われたことはなかった。

ところが今日初めて荷物を開けさせられ、金属探知器にも通させられたのだ。

出入国で時間がかかるというのは、その空港の利用をためらう大きな理由になる。例えば今回の仁川空港では、空港に着いてから出国審査が終わるまでに1時間近くかかった。これではトランジットで使う気になれない。

帰国時に入国審査でどれだけの時間がかかるかというのは、家に帰る時間が違ってくるので、できれば早く終えたい。

福岡空港で仮に審査が長引いて、長崎に戻る高速バス『九州号』が1本遅くなると、家に着くのが1時間遅くなったりする。タイミング次第で、入国審査の1分2分が命取りになることがあるのだ。飛行機の遅れで家に帰るのが遅くなるのは仕方がないとあきらめがつくが、税関でつまらないことに時間を取られて遅くなるのは、非常に不愉快だ。

福岡空港の場合、日本人だとすんなり通過できることが多いので、ここでストレスを感じることはない。しかし今日は長崎空港で時間を取られて、危うくリムジンバスを1本逃す所だった。1本逃すと30分遅くなったりすることもある。幸い出発間際のバスに乗れて、実害はなかったが。


長崎空港発着の国際線を利用しようと思うためには、いろんな要素がある。値段だけではなく、出入国手続きの手間や航空会社の快適性などである。

私も一度だけシンガポールに行く際に、長崎発着上海乗り継ぎを利用したことがある。結論としては、もう使いたくない、という印象を持った。

その理由は、中国東方航空のサービスレベルが低いこと、乗り継ぎの上海浦東空港が快適に過ごせないことなどである。

もちろんメリットもあって、値段が安いこと、時間帯がいいこと、長崎空港での出入国がスムーズに行くことが挙げられる。

実際には福岡空港からキャセイパシフィック航空を使って香港経由で行くことが多い。それはキャセイパシフィック・キャセイドラゴン航空のサービスレベルに満足できていること、香港空港でのトランジット時間を快適に過ごせること、香港で乗り継ぎのために1泊することもあるが、宿泊地としての香港の魅力が高いことなどが挙げられる。

上海乗り継ぎだけでなくソウル乗り継ぎでも条件を比較してみたい。長崎ソウル線に就航しているエアソウルはアシアナ航空とコードシェアを行っており、ソウルから先はアシアナ航空を利用することになる。アシアナ航空には乗ったことがないが、多分サービスレベルには満足できると思う。しかしソウルに宿泊地としての魅力を私は感じない。

最初のテーマに戻ると、ある路線を利用するには値段以外のいくつかの要因があるので、補助金を出して値段のメリットを出した所で、他のデメリットを打ち消せなければ、補助金の効果はないということになる。

そして長崎空港の税関の問題。これも長崎空港国際線利用のメリットを見事に打ち消してくれた。もちろん金の密輸が多発しており、地方空港が狙われているから厳しく検査しないといけないのはわかる。しかしそれが原因で福岡空港を使った方がいいと思われるのでは、元も子もない。税関検査が原因でその空港が避けられることがあるというのは、フランクフルト空港が実証しているので、長崎空港はそうなって欲しくない。

もちろん長崎空港の審査を緩くして欲しいと言うつもりは毛頭ない。福岡空港と同程度になればいいだけである。ちなみに、長崎空港は長崎税関の、福岡空港(対馬の厳原・比田勝も)は門司税関の管轄になる。

税関の立場からすると、地方空港が密輸で狙われるのであれば、わざわざ地方に職員を配置してコストをかけるよりは、極力地方空港を使わせないようにして拠点空港に利用客を集めた方が効率的だということにはなる。

私は今までどこの税関でも荷物を開けろと言われたことがないのだから、税関職員から見て私が怪しい人間でないのは間違いないはずだ。長崎だけ厳しいというのは長崎空港を避けたいという理由になってしまったので、その辺は職務遂行にあたって税関側も考えて頂きたい。