2018年12月11日火曜日

地域航空会社提携により上五島・小値賀航路復活へ

地域航空会社の再編に向けた協議が、一歩進んだという報道が出ている。


この話は元々、現在ANAの実質的傘下にあるORC(オリエンタルエアブリッジ)の面倒をJAL系航空会社に見てもらうために国を巻き込んで起こしたもので、連携の枠組みがすでに出来ているJAL系にとっては何のいいこともなくJAL側が反対していた、という状況だった。

それが、とりあえず九州3社(ORC、AMX(天草エアライン)、JAC(日本エアコミュータ))が業務提携するということで話がまとまったということだ。

ORCにとっては、行き詰まっていた新機種導入の目処がつけられることになり、特に長崎壱岐路線を存続させる道筋ができたので、大きな合意だ。

長崎壱岐路線を運航させるには、現状JAL系の航空会社が導入しているATR42を、ORCが現行のQ200の後継機として購入する方法しかなかった。ところがORCはこの1機だけのためにATR機の整備などを行うのは経営的に不可能であるとし、他に方法がなく故障がちの現行機の更新ができなかった。苦肉の策として現行機と同型の中古機を買うという話まで出ていた状況だった。

もしORCがATR42を導入できれば、現在定期便が運航されていない上五島や小値賀への定期便を復活させることもできる。世界遺産登録で観光客を呼び込みたい上五島や小値賀にとっても、いいことである。

ATRが開発中のATR42-600s機は800m滑走路での離発着が可能である。そのため現在800m滑走路しか持たない上五島・小値賀の両空港への就航も、この機種を導入することで可能になる。

日本には県内両空港以外にも800m滑走路をもつ所は多い。そのためATR社は、日本へのこの機種の売り込みを積極的に行っている。

ATR42-600S機は上のリンク先に書いてある通り、伊豆小笠原諸島においても使用価値がある。そちらにANA系の会社が路線を広げられれば、今回の地域航空会社提携の意味も大きいので、ANA側も熱心に話を進めるだろう。


今回の提携では、同じ便でANA系とJAL系双方のコードシェアも行うようだ。これにより、ORC運航便に乗ってもJALのポイントを貯めることが可能になり、いわゆる「修行僧」と呼ばれる乗客もORC路線に集めることができる。

「修行僧」とは、航空会社の高い会員ステイタスを得ることを目的として飛行機に乗る人である。ANAのステイタス基準は搭乗距離を基準にしたものだけだが、JALの場合は搭乗距離と搭乗回数の両方の基準がある。搭乗回数を目標にする場合は、短距離路線を一日に何往復も乗るのが効率が良く、特にステイタス基準期間末である年末の週末になると、福岡宮崎間を何往復もする人がたくさんいるような状況である。

JACの離島路線も、「修行僧」による搭乗率の底上げ効果は意外と大きい。搭乗回数を稼ぐためのツアーまであるので、ORCとJAL(JAC)のコードシェア実現は、長崎県の離島航空路の搭乗率底上げにも大きく寄与することになる。

さらに大きいのは、JAC運航便にもORCの便名を乗せられることになれば、長崎の離島路線をJACに運航してもらうことも可能になることだ。

上五島・小値賀路線は、長崎空港からより福岡空港からのほうが需要は高い。しかし、ORCは現在長崎空港を拠点にしているため、ORCが運航する場合は一度長崎から上五島や小値賀に飛び、そこから福岡に向かわないといけない。そうすると、長崎からの離島路線便の搭乗率が低く、経営的に苦労することになる。ところがJACは福岡にも拠点を置いている。

今回の提携をもとに、JACに福岡からの上五島・小値賀路線を運航してもらい、その便にORC/ANAの便名を乗せチケットを売れば、長崎空港からの機材を送り込む必要がなくなり、効率的な路線展開ができる。

新機種を導入しても、導入が1機だけだと整備期間中に運航できなくなる。AMXは飛行機を1機しか持たない会社なので、以前は整備期間には運休せざるを得なかったが、ATR導入を機にJAL系航空会社間で整備期間中の機材を融通するシステムを作ったため、現在は整備期間中でも運休する必要がなくなった。

長崎でもJACにATR42-600sを導入してもらい福岡-上五島・小値賀航路をお願いした上で、ORCも同型機を1機導入し、JACの整備期間中にはORCから貸し出せばいいのだ。


今回の事業提携を機に、行き詰まったように見えた長崎の離島路線が活性化されることを期待したい。