長崎就航2年 ソウル便 伸びぬ邦人客
私もソウルに用があることは無いのだが、トランジットで使えるかもしれないということで一度利用したいと思っていた。今日、この便に乗ってみたので、その感想を書く。
参考までに、上の記事で重要な部分を引用しておく。
県などでつくる県空港活性化推進協議会と日本旅行業協会(JATA)長崎支部などは長崎-ソウル線、長崎-上海線の旅行商品の代金を先着200人を対象に5千円値引きするキャンペーンを10月27日から11月末まで展開中。ただ、8日時点で長崎-ソウル線の商品に申し込んだのは4人だけ。同室は「ぜひとも利用してほしい」と呼び掛けている。本稿はこの値引きキャンペーンが無駄なお金だ、と言いたいのだ。
最初にこういう補助金にはどんな効果があるのかを考えてみる。
今回のような一時的な補助金は、一度利用して利用者に良さを知ってもらい、次回以降は自費で使うことにより、価値が生まれる。そう、自腹を切ってでも使おうという気持ちを持ってもらえないのなら、補助金は全くの無駄になるのだ。
補助金が出て安いから利用しよう、安くないのなら使わない、というケースもありうる。その場合は永続的に補助金を出し続けないといけないのだが、果たして補助金を出してまで路線維持をするメリットがあるのか、という別の価値判断が必要になる。今回のケースは違うので、その議論はしない。
なぜソウル便の日本人利用者が少ないのか。長崎から韓国への旅行客が多くないということもあるが、この便の最大の問題点はソウル発の時間が早すぎることだ。引用した記事中にも触れられているが、ソウル発は朝7時55分。空港に2時間前に着く必要があるので、6時頃には空港に着かないといけない。エアソウルはLCCなので時間には厳しいため、ここは絶対条件になる。市内のホテルから空港まで1時間程度かかるので、ホテル発は朝5時だ。そうすると、何時に起きないといけないのか。
入国審査の時に近くにいた旅行客のご婦人と話をしてみると、やはり4時起き5時出発ということだった。
私もホテルを5時前に出たが、これは避けたい。多分タダででも一度この行程を経験すると、もう行きたくないと思うだろう。つまり、補助金の目的を全く果たせておらず、逆効果にしかならない、ということだ。
このソウル便が全く使えないということでもない。ソウル仁川空港はいわゆるハブ空港であるため、ソウルで乗り継いで他の国に行き来する時には使えるのではないかと思う。朝が早いといっても、早朝にソウル着の便から乗り換えるのなら、ちょうどいい時間になることもある。
乗り継ぎで使うと言っても、宿泊を伴う場合はきついな、というのが今回の印象だ。まさに早朝着便限定でしか使えないだろう。トランジット利用で宿泊が必要になることは多々ある。成田空港近くにホテルが沢山あるのも、乗り継ぎ利用者が宿泊するためのものだ。余談になるが、羽田空港が国際化される前も、成田の方がソウル仁川より遥かに多くの人に乗り継ぎ利用されていた。また長崎から海外旅行をする場合に成田で前後泊することはは珍しくなかった。そういう利用者が成田ではなくソウルを使う、というのは、ちょっと勘弁、という気がする。
そうして最後にダメ押しだったのが、長崎空港での税関検査である。
私はこの数年、月1回平均位で日本に入国している。そして、今まで一度も税関で荷物を開けろと言われたことはなかった。
ところが今日初めて荷物を開けさせられ、金属探知器にも通させられたのだ。
出入国で時間がかかるというのは、その空港の利用をためらう大きな理由になる。例えば今回の仁川空港では、空港に着いてから出国審査が終わるまでに1時間近くかかった。これではトランジットで使う気になれない。
帰国時に入国審査でどれだけの時間がかかるかというのは、家に帰る時間が違ってくるので、できれば早く終えたい。
福岡空港で仮に審査が長引いて、長崎に戻る高速バス『九州号』が1本遅くなると、家に着くのが1時間遅くなったりする。タイミング次第で、入国審査の1分2分が命取りになることがあるのだ。飛行機の遅れで家に帰るのが遅くなるのは仕方がないとあきらめがつくが、税関でつまらないことに時間を取られて遅くなるのは、非常に不愉快だ。
福岡空港の場合、日本人だとすんなり通過できることが多いので、ここでストレスを感じることはない。しかし今日は長崎空港で時間を取られて、危うくリムジンバスを1本逃す所だった。1本逃すと30分遅くなったりすることもある。幸い出発間際のバスに乗れて、実害はなかったが。
長崎空港発着の国際線を利用しようと思うためには、いろんな要素がある。値段だけではなく、出入国手続きの手間や航空会社の快適性などである。
私も一度だけシンガポールに行く際に、長崎発着上海乗り継ぎを利用したことがある。結論としては、もう使いたくない、という印象を持った。
その理由は、中国東方航空のサービスレベルが低いこと、乗り継ぎの上海浦東空港が快適に過ごせないことなどである。
もちろんメリットもあって、値段が安いこと、時間帯がいいこと、長崎空港での出入国がスムーズに行くことが挙げられる。
実際には福岡空港からキャセイパシフィック航空を使って香港経由で行くことが多い。それはキャセイパシフィック・キャセイドラゴン航空のサービスレベルに満足できていること、香港空港でのトランジット時間を快適に過ごせること、香港で乗り継ぎのために1泊することもあるが、宿泊地としての香港の魅力が高いことなどが挙げられる。
上海乗り継ぎだけでなくソウル乗り継ぎでも条件を比較してみたい。長崎ソウル線に就航しているエアソウルはアシアナ航空とコードシェアを行っており、ソウルから先はアシアナ航空を利用することになる。アシアナ航空には乗ったことがないが、多分サービスレベルには満足できると思う。しかしソウルに宿泊地としての魅力を私は感じない。
最初のテーマに戻ると、ある路線を利用するには値段以外のいくつかの要因があるので、補助金を出して値段のメリットを出した所で、他のデメリットを打ち消せなければ、補助金の効果はないということになる。
そして長崎空港の税関の問題。これも長崎空港国際線利用のメリットを見事に打ち消してくれた。もちろん金の密輸が多発しており、地方空港が狙われているから厳しく検査しないといけないのはわかる。しかしそれが原因で福岡空港を使った方がいいと思われるのでは、元も子もない。税関検査が原因でその空港が避けられることがあるというのは、フランクフルト空港が実証しているので、長崎空港はそうなって欲しくない。
もちろん長崎空港の審査を緩くして欲しいと言うつもりは毛頭ない。福岡空港と同程度になればいいだけである。ちなみに、長崎空港は長崎税関の、福岡空港(対馬の厳原・比田勝も)は門司税関の管轄になる。
税関の立場からすると、地方空港が密輸で狙われるのであれば、わざわざ地方に職員を配置してコストをかけるよりは、極力地方空港を使わせないようにして拠点空港に利用客を集めた方が効率的だということにはなる。
私は今までどこの税関でも荷物を開けろと言われたことがないのだから、税関職員から見て私が怪しい人間でないのは間違いないはずだ。長崎だけ厳しいというのは長崎空港を避けたいという理由になってしまったので、その辺は職務遂行にあたって税関側も考えて頂きたい。