私は国内、海外を問わず展示会や商談会、学会などに参加する機会は多い。そのため、各地にあるMICE施設を利用しているのだが、長崎のMICE施設に関する議論を見ていると、全くMICE施設を利用しない人達が見当違いのことを言っていることが多いと感じる。
一番ひどいのは、「もう全国各地にMICE施設があるのだから、後発の長崎ではイベントを誘致できない」というもの。イベントを誘致できるかどうかに、施設が古いかどうかなんて関係ない。それを言えば、幕張メッセがあるから後発の東京ビッグサイトではイベントが誘致できない、ということになる。そんなことはない。東京モーターショーだって、幕張で開催されていたのが東京ビッグサイトに移った。イベントの開催地は施設の利便性などが重要なのであって、古いかどうかは二の次である。
逆にいえば新しい施設であれば古い施設で発生した問題点を改善したものが作れるので、さらに利用しやすいものになり、競争力が高まる。沖縄コンベンションセンターは古い(1987年完成)ので、そういう意味でも競争力が低くなっていると感じた。
私が今まで利用したコンベンション施設は、いずれも大都市に立地するものであった。今回の沖縄コンベンションセンターは、初めての地方にある施設だ。幸い現地の担当者の方ともお話しができて、地方のMICE施設に求められる機能がどういうものか、ということがよくわかり、参考になった。
結論から言えば、長崎駅前にできるMICE施設は、沖縄のコンベンションセンターと比べても、遥かに競争力は高いということがわかった。
沖縄コンベンションセンターの問題点は大きな部分で3つある。
1.空港からのアクセス
2.食事場所
3.ホテル
それぞれについて説明する。
まずアクセスから。
沖縄のコンベンションセンターは那覇市ではなく宜野湾市にある。那覇空港からバスで1時間近くかかり、これがとにかく不便。
交通アクセス
ここも当然国際イベントを開催する目的で建設された。となると、空港からのアクセスは非常に大事だ。ところが直通のリムジンバスがない。路線バスはあるが、海外からの大きなスーツケースを持ったお客さんに路線バスで来て下さいというのは、どうだろうか。イメージとしては、長崎空港から諌早の陸上競技場まで路線バスで来て下さい、というようなものだ。しかもコンベンションセンターに来るのは観光客ではない。仕事で来るのだ。まずここが大きなマイナス。
それに付随する話にもなるが、コインロッカーがない。空港から直接来た人が荷物を預けられないのだ。荷物預かり場は主催者が用意しないといけない。私が行った時も、大きなスーツケースを持ち歩いている外国人を沢山見たが、そういう配慮をイベント主催者にさせないといけないのは、施設側の問題である。
次に食事場所。
昼ご飯を食べる所がないのである。
東京ビッグサイトや幕張メッセのような、毎日何かのイベントがある所であれば、施設内にレストランが沢山あっても、各店舗の商売が成り立つ。ところがイベントが少ない地方の施設だと、常設のレストランがいくつもあると、経営的に成り立たないのだ。
施設内に唯一あるビュフェレストランは、貸し切りになっていて一般客は入れなかった。まあ、こういうのは運営側の問題になるが、せめて一部は一般客用に解放してもらいたい所だ。
そのためフードトラックが入っているのだが、サッカーの試合で来ているのならいいけど、仕事で来ていてここで食事をするのも、落ち着かない。
ちなみに置いてあるテーブルの脚に砂袋が結んであるが、ここは風が強いので、こうしないとテーブルが飛んでいってしまう。開放的な施設だと、こういう部分で使いにくい。
昼食時間帯には席が足りなくなるので、後ろの噴水のへりなどにも座って食事を取らないといけない。この写真は混雑のピークを過ぎた時間帯だったが、ピーク時には大混雑であった。
後方の真ん中にビルが見えるが、施設を出て食事を取れる場所は一番近くてもここ。見知らぬ土地で昼食時間にここまで行こうというのは、なかなか厳しい。会場では弁当も大量に配られていたが、ゆっくり食事を取りたいと思う人には、厳しい環境だ。
最後にホテル。とにかく近くにホテルがない。一番近い所にあるのはリゾートホテル。いわゆるビジネスホテルは全くない。
コンベンション施設を利用するのは金持ちだけではない。特に大規模な展示会だと、普通のサラリーマンが多数だ。となると、すぐ近くにビジネスホテルが欲しい。
幕張メッセも近くにオータニやプリンスホテルという国内では高級のホテルが立地したのだが、今やプリンスホテルはアパホテルに売却されて、ディズニーランドに向かう外国人客を沢山集めているような状況になっている。東京ビッグサイトの目の前には、最初からビジネスホテルしか建設されていない。という例を見ても、MICE施設の近くにはビジネスホテルがないと、利用者には不便なのだ。
このような問題は、長崎駅前にできるMICE施設は全てクリアしている。長崎のMICE施設に関する議論では、こういう部分も考慮されるべきである。