2014年8月25日月曜日

長崎駅横の土地にMICE施設を造らなかったら何ができるのか

長崎駅横の、区画整理事業によって生まれる一等地を、議会の承認を得ずに、市が地権者であるJR貨物と売買交渉をしていた、ということが問題になっている。

このことは確かに手続き的に問題はあろう。だからといって、この事業をやめさせていいのだろうか。

最初に断っておくが、私は区画整理事業自体に反対である。今現在JR貨物が所有する長崎駅近くの土地は、貨物列車のために利用されるべきだと思っている。

しかし、区画整理事業が議会を通ってしまった以上、この事業に反対しても手遅れである。いつまでも区画整理事業に反対するよりも、現状を見つめて、区画整理事業は行われた上で、一番長崎の将来が開ける案を考えることが、建設的で現実的である。

区画整理事業が行われる以上、長崎駅に貨物列車を運行することは不可能になる。そうなると、JR貨物は、駅横の土地を所有する必然性がなくなる。もちろん、そのまま所有した上で不動産業を行うという可能性もあるが、JR貨物はJR九州と違って、不動産運営のノウハウを持たない。普通に考えたら、誰かに売ることになる。現状の貨物ヤードでは買い手がみつからなくても、区画整理事業が行われて、JR長崎駅の改札の目の前にまとまった土地がある、となると、誰かが買うであろう。

そして、この「誰かが買うであろう」土地を、第三者に買われる前に長崎市がMICE施設用に抑えよう、としたのが、今回の状況である。


では、長崎市が買わないとなると、誰が買うのか。今の社会情勢からすると、ここを買うのはイオンか外資系の投資ファンド位であろう。

駅前にイオンのショッピングセンターができたら、長崎市の都市設計としてはどうだろうか。以前ブログに書いたように、 それはそれで市民生活の向上につながる、という考え方もできる。長崎駅前にも「させぼ五番街」的なものができる、という感じか。しかし、私の感情としては、それはちょっと寂しい。

では外資系ファンドが買うとどうなるか。これこそどうなるかわからない。駅前に巨大なコールセンターができるかもしれない。これも雇用の確保につながって、長崎市のためにはいいのかもしれないが、私は寂しい。


実際の所、MICE施設以外にいい活用方法はあるのだろうか。

市議会が、先に土地を確保しようとした市側のやり方に反発するのはわかる。しかし、区画整理事業を認めたのは市議会であり、認めた以上は、MICE施設に反対するのであれば、それに代わる案を出さないと、私は納得できない。MICE施設に反対して、民間に開発を任せて、駅前にコールセンターができる方がいい、と議会が市民に訴えて支持されるのであれば、私もそれを認めようと思う。

市議会が対案を出せないのであれば、今回の市側の行動は厳重注意に留めておいて、MICE施設の建設は認める方向で動いて欲しい。

2014年8月21日木曜日

クルーズ船寄港地としての長崎の魅力

久し振りに昔の記事を見返してみると、こんなことを書いていた。

中国からの買物クルーズ客は、あっという間に福岡と鹿児島に取られてしまった。

 じゃ、長崎にクルーズ船は来なくなったの?ということで、自分の発言に責任を持つ意味も含めて、今の状況をまとめておく。

2008年から2013年のクルーズ船寄港状況は、ここを参照。

いや、確かに2010年は、外国船の寄港数で、長崎は鹿児島に逆転されている。それを元に書いたのが、最初に挙げた記事である。

それで、その後どうなったか。

鹿児島の寄港数が増えたのは、近くにイオンの巨大なショッピングセンターができて、そこにバスで中国人買物客を運ぶ、というやり方が、当たったからである。

しかしその後、鹿児島への寄港数は激減した。まあそりゃ、買物目的なら福岡には勝てない。買物以外の魅力を、鹿児島が提示できなかったのが敗因である。

そして長崎は盛り返す。これは、買物以外の寄港地としての魅力が高かったからに他ならない。

確かに中国人向けクルーズ船の第一の目的は買物かもしれない。しかし、買物プラス1、という観点でコースを組んだら、博多港と長崎港に行き着いた、というのが現実である。天津から博多と長崎をまわって天津に戻る、というツアーが2014年に急増している(もっとも、こういう一気に増えたものは、一気になくなる可能性もあるのだが)。

また、沖縄や石垣が上位にあるのは、台湾からのクルーズ船が多いからである。距離が違いので、これは別種のものと考えた方がいい。


欧米人が中心のクルーズ船になると、日本の寄港地は横浜・神戸・長崎が評価が高い。長崎の相手として見ると、神戸はもう相手になっていない感じである。また横浜の寄港数が多いのは、「寄港地」としてよりも、関東にあるため「乗降地」としての役割の方が大きいからだ。となると、「寄港地」としてだけの魅力でいえば、現時点で、長崎が日本一なのである。

実際に、長崎がこれだけ寄港地としての客観的評価が高いということに、長崎市民はどれだけ気付いているのだろうか。

長崎のMICE施設は競争力が高い

長崎駅周辺の区画整理事業にからんで計画中のMICE施設に関して、反対意見が出ている。 そもそもMICE施設とは何なのか、ということが実感を持てないし、作った所で需要があるのだろうか、という疑問も多いようだ。

私はいくつかの学会に所属しており、学術大会にも継続的に参加しているので、その辺は普通の人よりは事情に詳しいはずである。 需要があるのか、似たような施設が各地に建設される中で、長崎が勝てるのか、という点について私見を述べたい。


先日、とある学会の全国大会が長崎市内で開催された。私も参加したのだが、実行委員の方の話だと、「予想したよりかなり参加者は多かった」とのことだった。全国大会は毎年各地で行われているので、これは、「長崎で開催される学会は、他都市より遥かに多くの参加者を集められる」ということである。

実際に参加している人の様子を見ると、確かに他都市で開催されるいろんな学会とは雰囲気が違った。まず、カステラを持っている人が多い。カバンの中はお土産のカステラでいっぱいだ、なんて話も聞こえる。持ってなくても、これから帰りにどこでカステラを買って帰る、なんて話は、みんながしていた。 こういうことは、他所で開催される学会では見かけない状況である。

少なくとも長崎ではカステラを買う、という魅力がある。その他さまざまな要因が合さって、長崎で学会が開催されるのなら、参加してみよう、と思う人は、結構いると感じた。当然、主催者側は参加者にとって魅力がある開催地で学会を開催したいと考えるのだから、「他都市との競争」という点では、長崎は相当優位に立っているのだ。

また、これだけみんながカステラを買って帰ってくれるのだから、経済波及効果も、他の都市より遥かに高いはずだ。もちろん、波及効果が福砂屋にばかり及ぶ、という見方もあろうが、そこは他の業者が頑張ればいいことだ。

長崎に住んでいる人は、外から見ると、長崎がどれだけ魅力のある所なのかがわかりにくい。実際には、住民が思っている以上に魅力のある都市だと外からは見られている、というのが、私の今までに受けている印象である。別項で書いたが、長崎はクルーズ船の寄港地として、現在日本一魅力のある港になっている。長崎市民はその事実を、どれだけ客観的に理解しているのだろうか。それと同じことで、学会の開催地としても、福岡には劣るだろうが、その他の都市に比べると、遥かに競争力を持っている都市なのだ。

MICE施設に反対する理由として、「他の都市に勝てない」というのは、外した方がいい、というのが、私の印象である。