その中で、「感染者が出ているのに観光客を受け入れるのはけしからん」というような意見を言う人がいる。
こういうことを言う人は、大前提が間違っていることに気付いて欲しい。
コロナウイルスは永久になくならないのだ。必ずいつか、どこかで陽性者が出る。だから、陽性者が出る前提で話をしないといけない。
陽性者を出さないことが目的になるのであれば、長崎には観光客を永久に呼べなくなる。それでいいのか。観光に従事していない人や年金で生活している人は困らないだろう。しかし、それでは地域が衰退してしまう。
市民に強烈な行動規制を強いて徹底的な封じ込めをやったニュージーランドは、今国境を開けなくて大問題になっている。国境を開ければ、必ず感染者が入ってくるからだ。実際、葬儀のために帰省した人がウイルスを持ち込んで、大問題になってしまった。
新型コロナ「勝利宣言」のニュージーランドにも新規感染者
当初は、ニュージーランドとオーストラリアの間だけは移動できるようにする計画だったが、それも暗礁に乗り上げている。
感染者を出さないという政策は、経済を壊滅させる危険な方針だということを、長崎の人にも理解して欲しい。
ではどうすればいいのか。コロナ陽性者が出ても心配しないで済む医療体制を整備することが大事なのである。具体的な内容は以下の記事ですでに書いたので参照頂きたい。
「コロナ後」を見据えた観光戦略を
「コロナ後」の対策を、特に対馬で早めに立てよう
長崎新聞に対馬グリーン・ブルーツーリズム協会事務局長の川口幹子さんが興味深い記事を投稿されていた。
【寄稿】「ポストコロナの農村観光」 不要不急を田舎の特権に
一部引用する。
大皿に盛られた刺身や鍋を囲みながら、マスクを着けずに会話を楽しみ、客とホストの間に、金銭と品物の交換を超えたコミュニケーションが生まれる。ポストコロナの日常で、それが田舎の特権になるならば、田舎に生きる私たちは、それを誇りと認識し、守らなければいけない。
そもそもマスクをして接客することを、客が望んでいるのか。宿側が勝手に客が求める「安心・安全」を判断して、過剰な安心を押し付けているのではないのか。そこを考えて欲しい。
現状では、都会に住む人が田舎に行く時に、自分が田舎にウイルスを持ち込むのではないかと心配して、旅行を控えている。都会から田舎に行って、田舎でウイルスを貰う心配をしているのではないのだ。マスクは自分から相手にウイルスを飛ばさないようにする効果しかない。つまり、田舎でウイルスを貰う心配をしていない都会の人に対して、マスクをして接客するというのは、必要のないことなのだ。
「私達はウイルスを貰う心配をしていません。仮に罹患しても、長崎県には十分な医療体制がありますので、私たちがコロナで死ぬことはありません。だから、心配せずに旅行に来て下さい。」と都会の人にメッセージを出さないといけないのだ。
私は先日東京に行ってきたが、電車の中の人が全員マスクをつけているのを見て、息苦しさを感じた。東京に住んでいたとすれば、その息苦しさから解放されるために地方に旅行に行っているのに、旅行先でまで全員マスクをして飛沫防止のビニールに覆われた状況を見て、気持ちが安らぐだろうか。
上京した時にJALの株主総会に参加して、質疑応答の時間に手を上げたら指名されたので、1つ質問をした。「過剰なコロナ対策をするのは、やめて欲しい。特に乗客全員にマスク義務化をするのは解除して欲しい。これから夏休みに入ってリゾート地に家族連れで旅行をする時に、全員マスク着用の機内にいたら、息苦しくなる。」と。
担当役員からの回答があり、「永久にマスク義務化を続けるつもりはないが、今はまだ乗客の反応を見るとマスクは義務化すべきだと判断している。」とのことだった。つまり、機内でマスクを義務化することに対して科学的根拠はなく、乗客の気持ちを勘案して判断しているということだ。
長崎新聞に以下のような記事も出ていた。
<いまを生きる 長崎コロナ禍> 消える? 大皿、直箸、杯洗… 長崎料亭文化に逆風
これも一部引用する。
卓袱は女将が「御鰭(おひれ)(吸い物)をどうぞ」と客に勧めて始まる。「花月」女将の中村由紀子さん(62)はその際、全従業員がマスクを外さないことに理解を求める。「たとえ、やぼと言われても、感染者を出して長崎観光のブランドを傷つけるわけにはいかない」と考える。
これは1つの考え方ではあると思うが、私は女将がマスクを外さない料亭には行きたくないし、仮に感染者が出た所で長崎観光のブランドが傷つくとも思わない。
星野リゾート代表の星野佳路氏の意見も引用する。
【星野リゾート・星野佳路代表】「久しぶりに代表としてお呼びがかかった」。倒産確率を示して社員と共有した現状と未来
かなりのペースでアイデアがいろいろと出てくるので、逆にあまり細かいことは見ていないのですが、マスクをつけた接客は、スタッフの表情がお客様に見えないので、私は1月ぐらいまでは反対していました。その後、「それでもやります」ということでマスクでの接客になっています。
1月の段階ではここまで深刻になるという認識が私になく反対したのですが、今も改善は依頼しています。表情が見えるシールド・タイプにするか、マスクのデザインを工夫するようにと。
なぜなら、星野リゾートのサービスにおける顧客満足度というのは、施設よりもスタッフに対するもののほうが圧倒的に高いからです。「スタッフの笑顔が素晴らしい」という感想を毎日のようにいただく。マスクで表情が分からずしてスタッフの笑顔や気持ちが伝わるのかと思うからです。
感染対策として気安く従業員にマスクを着けさせている接客業の方々、星野社長の意見もふまえて、そこは良く考えて頂きたい。少なくとも私は、マスクや飛沫除けのビニールシートやアクリル板のないホテルを積極的に選ぶ。チェックインで検温されたら、ふざけるなと言いたくなる。
話を元に戻すが、少なくとも長崎県では、「感染者が出ることは気にしない」「出ても大丈夫な医療体制を整える」ということを、県民そして旅行に来る都会の人に積極的にPRすることを政策の基本に置いて欲しい。間違っても過剰な感染防止対策をすることを推し進めることは、やめて欲しい。必ずしも旅行者はそれを望んでいないのだから。