2020年7月23日木曜日

長崎県のコロナ対策は目的が見えないことが問題

長崎県内でも無症状の検査陽性者が増え(患者とは言わない)、県民および旅行者の不安感を増大させているが、特に県知事がしっかりとしたメッセージを出さないことが、大きな問題だと感じる。

新型コロナ対策で一番まともなことを言っているのは、大阪府の吉村知事だ。

ちょっと長いので私も全部は見ていないが、会見のようすを紹介する。


大阪府・吉村知事「陽性者120名程度。過去最多。30代以下が7割」(2020年7月22日)


吉村知事は、これだけ大阪府内で検査陽性者が増えても、Go Toキャンペーンについて「その必要性は認識をしています。」と言っている。

大阪府・吉村知事が定例会見7月22日(全文2)休業要請は持続可能なやり方ではない


吉村知事の素晴らしい所は、コロナ対策の目的がしっかりしていて、そこを目指していると明言していることである。具体的にいえば、「医療機関をひっ迫させない」ということだ。

いくら検査陽性者が増えようが、無症状や軽症者ばかりであれば、ホテル療養にすれば医療機関への負担は減らせる。だからホテルを確保する。そして、医療に負荷がかからない範囲内で経済を回す。今は重症者が非常に少ないので、感染拡大に注意しながら、飲食店の利用や旅行も認める。実にわかりやすい。

長崎県知事の話からは、こういう方針が全く感じられない。観光客を受け入れることが長崎県経済のために重要であるのなら、そのためにどういう対策を取っていくか、吉村知事のようにきちんと説明すればいいのだ。長崎県の場合、現在病床を占有しているのは、重症者どころか軽症ですらない無症状者ばかりだと、何故知事の口から言わないのか?

実際には方針も対策もないので、説明のしようがないのだが(苦笑)。


長崎県の方針のなさが顕著に現れたのが、五島での陽性者発覚後の対応である。この対応に問題があることは、前回の記事に書いた。

五島保健所は自ら医療崩壊を招くつもり?


陽性者の濃厚接触者はいないが、接触者の希望者全員に検査をした。何のための検査なのか、目的が全く見えない。

接触者13人の検査は陰性だったようだが、仮に全員陽性だったら、どうしたのか?全員入院させるつもりだったのか?陽性判明者2人に加え13人を入院させたら、15人になる。五島市の感染症指定病院に15人も入院させると、他の診療に影響が出ないのか。そこまで考えて検査をしたのだろうか。

みなとメディカルなど新たに3人 長崎県内感染確認50人に


税金を使って検査をする以上、それは「陽性になる確率が高い」ことが理由にならないといけない。つまり、13人が陽性になる前提で事後の対応を考えた上で、検査をしないといけないのだ。仮に陽性者が出ないと思うのであれば、公費で検査をしてはいけない。

政府の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策を助言する分科会の尾身会長は、PCR検査の対象として、以下のように述べている。

1例でも感染出た医療機関、接触問わず「PCR検査可能に」、分科会


検査体制を巡って、尾身会長は7月6日の初回会合で、(1)有症状者、(2)感染リスクおよび事前確率が高い無症状者、(3)感染リスクおよび事前確率が低い無症状者――の3つのカテゴリーに分けて、それぞれの対象範囲やふさわしい検査の在り方を検討する意向を示していた。

一方、これらに該当しない(3)の場合は「行政検査は実施しない」と明記し、自費での検査であれば認める考えを示した。

五島市の接触者は(2)だったのか。「濃厚接触者」であれば(2)だと言えるが、ただの「接触者」であるから(3)であろう。


長崎県の対応は、「医療機関に負荷をかけないようにする」ことを目標にしているとは、思えない。大量の無症状・軽症の陽性者を炙り出し、無症状の状態で入院させ、医療機関の負担を増やし、コロナ以外の患者への診療に悪影響を与えている。

そして、県民には「医療危機が起こる」と言い、行動を萎縮させる。この状態で観光客に来て下さいと県民が思えるはずがない。

私はかなり前から訴えているのだが、何故長崎県は離島での軽症者用施設を確保しないのか。確保できているのは壱岐市の市所有施設だけだと聞く。


「コロナ後」を見据えた観光戦略を
「コロナ後」の対策を、特に対馬で早めに立てよう


長崎県がやるべきことは、特に離島において軽症者用の施設をしっかり確保し、「陽性者が出ても通常の医療には影響が出ないようにします」と言うことではないか。

また、壱岐では重篤化のおそれがある罹患者を自衛隊のヘリコプターで本土に搬送した。今回も五島で重篤化のおそれがあるとして、海上保安庁の巡視船で搬送した。こういう例を挙げ、「何かあっても万全の体制で治療しますから、心配しないで下さい」と離島住民に言うべきではないか。


長崎県の対応は、とにかく県民の不安感を煽って行動を萎縮させようとすることばかりだ。そのくせ、観光客には来てくださいと言う。これでは県民が県政に対して信頼感を持てるはずがない。観光客に来てくれと言うのであれば、大阪府知事みたいにしっかり方針を示して、県民を納得させる努力が必要である。