2020年7月22日水曜日

五島保健所は自ら医療崩壊を招くつもり?

五島市で初の新型コロナウイルス感染者が確認された。
2人とも現在無症状だということである。

以前から繰り返し書いているが、ウイルスが永久になくならない以上、「感染者を出さない」という方針を取るのは間違いで、「出た時にどう対処するか」を考えることが重要である。

もともと日本の新型コロナ対策はどういう方針だったかといえば、医療崩壊を招かないことと重症者を出さない、ということだった。感染者をゼロにする、ではない。

ところが、各地の首長が「感染ゼロ」を目指して検査数を増やし、無症状の感染者を大量に浮かび上がらせて、国民の不安を増大させている。今大量に出ている感染者は、「37.5度以上の発熱が4日続く」という以前のルールに従えば、ほぼ全員が「検査を受けられなかった」人たちであり、重症者もほとんど出ていない。それなのに、国民の不安は解消されていない。

「発熱4日ルール」までは行かなくても、無症状者に対する検査をなくすだけでも、国民の不安感の解消度は相当なものになるのだ。安心のために検査をするというのは大きな間違いで、現実には検査をすることにより国民の不安は増大しているのである。


五島市の話に戻す。感染者の濃厚接触者はいないということだが、接触者は希望すれば全員検査を受けられるそうだ。

五島市内で新型コロナウイルス感染者が確認されたことによる市長メッセージ

今回、感染された方との接触者につきましては、7月21日から22日までに五島保健所から連絡があり、希望される方は全員検査を受けていただきます。なお、濃厚接触者と判定された方はいらっしゃいませんでした。

これ、誰が決めたのだろうか。文面からすると五島保健所だろうか。となると、長崎県が決めたということだ。

もしこれで無症状の感染者が何人も出てきたら、県はどう対応するつもりなのだろうか。

五島市の感染症病床は4床しかない。もうそのうちの2床が埋まっている状態だ。23床までは対応できるようだが、そうなると医療機関の機能低下は免れず、他の病気の人に対して十分な医療が提供できなくなる。

これは実際に東京での感染ピーク時に起こった話で、コロナ対策で病院が疲弊し他の病気への対応に影響が出て、新型コロナによる死者よりも他の病気による死者が増えた、という現場の意見がある。

新型コロナ「超過死亡」提示へ 厚労相「専門家と検証」

海外では週単位で全死亡数が公表されており、「超過死亡は感染者の死亡報告数より6割多い」などとする分析が出ている。感染者の見逃しだけでなく、医療崩壊が起きて適切な医療を受けられずに死亡した可能性などが指摘されている。


長崎市でも検査陽性者の数が増えていることが問題になっているが、「入院中」の全員が無症状である。

さすがに全員が無症状だというのはデータがおかしいとも思えるが、新聞報道に出ている範囲では、「入院した」という話は全員症状が改善した後である。
(7/27追記 上の図、クリックしてみて下さい。さすがにゼロは間違いで、「データなし」だそうです)

長崎市民病院(今は名前が変わったらしいが、長すぎて覚えきれない)ではクラスターが発生し、診療のほぼ全面休止など大幅に病院機能が低下している。

みなとメディカル感染4人 長崎県内46人に 五島でも2人初確認


ところが、検査陽性者は全員発熱1日とか無症状というレベルで、そういう人を入院させ医療資源を食いつぶし、本来の患者さんへの診療が手薄になっているのだ。

私は当該病院に知人がいないので全く情報を持たないが(Yahoo!ニュースのコメント欄では見かけた)、さすがに今の状況に直面すれば、このやり方はおかしいと思うだろう。発熱1日とか無症状の患者を完全防御で手厚く保護して、他の患者の診療を制限しているのだから、まともな医療者なら相当歯痒い思いをしているだろう。


長崎県は、本土の医療体制を1段階上の「フェーズ2」に引き上げた。

新型コロナ 長崎県「フェーズ2」へ 本土の医療機関に病床確保を要請

本土では長崎市の長崎みなとメディカルセンターで集団感染が発生するなど、19日現在、計23人が指定医療機関に入院、または軽症者用宿泊療養施設に入所。県は入院・入所の内訳を公表していないが、入院者が49床の3分の1を超えたとみられる。

しかし、何故入院・入所の内訳を公表しないのか。入院者が軽症なのか無症状なのか公表しないのか。上に出したデータは、県が軽症なのか無症状なのか公表していないから、「軽症・中等症」が0なのかもしれないが、仮に全員無症状で、無症状者のために病床が圧迫されて、他の病気の患者への診療体制が制約されるというのは、おかしいだろう。

以前にも書いたが、やはり長崎県は、対応が根本的に間違っていると思う。

長崎県医師会と長崎県知事は今何をすべきか全くわかっていない



長崎県の医療関係者は、「コロナ対策の目的」が何なのかを、もう一度考え直して欲しい。