軍艦島クルーズ 運航再開めど立たず 「3密」回避対策に苦慮
多分、こうなるだろうな、とは思っていた。軍艦島クルーズ船は対策の立てようがないからだ。そもそも密接して座らなければならず、座席間隔を開ければ採算が取れない。
ではなぜこうなるのか。コロナ対策の目的と手段が入れ替わっているからだ。
何のために対策を取らないといけないのか。新型コロナを拡散させないためだ。そこが目的で、「3密回避」というのはあくまで手段でしかないはずなのに、手段の方が目的化して、3密回避が果たせない限りは、コロナ自警団から祭り上げられ、営業をすることができないという状況になっている。
科学的に考えると、軍艦島クルーズを運航するめの対策は、乗客にマスク着用を義務づけるだけで十分なのだ。窓を開けて密閉を避ければ、マスクにより密集、密接によるウイルス拡散は回避できる。
何のために密接を避けるのか。新型コロナウイルスを持っている人が唾を飛ばし、それを近くにいた人が受けて感染しないように、である。これはマスクをすることによって防げる。
今は、マスクをすることが絶対という間違った意識が世間に広がっていて、何のためにマスクをするのかは、完全に置き去りにされている。じゃあ効果のない状況でマスクをして熱中症になったら、どうするのか。ついに厚生労働省も、暑い時には屋外でマスクをする必要はない、と公式に表明した。
暑い屋外、マスク外して コロナに加え熱中症も注意 厚労省など
これより前に、長大病院の泉川教授も、運動時にはマスクを外すことを指摘している。
解除後2週間が鍵 長大病院の泉川公一教授
運動の際のマスクは体に負荷がかかるため、着用せずに距離を取るべきとした。私が勝手に翻訳すると、マスクは飛沫が飛ばないようにするものであるから、飛沫の届かない距離を開ければ、マスクは不要だ、ということだ。
軍艦島の船は、この逆である。密接は避けられないからマスクをして飛沫が飛ぶのを防ぐ。これで対策は問題ない。
そもそも軍艦島のクルーズ船程度で感染が広がるのなら、大都市部の満員電車なんてもうウイルス広がりまくりになっているはずだ。
ダイヤモンドプリンセスへの「突入」で有名になった神戸大学の岩田教授が、下のようなことを言っている。
「高校野球の開催は可能だった」感染症の専門家が語るゼロリスク思考の弊害
科学的に考えれば、軍艦島クルーズはマスク着用義務化で対策は十分である。でも、それでは世間が納得しないから運航会社は困る。だったら運航会社が例えば長大の泉川教授に「マスクで大丈夫です」と言ってもらえばいいんだろうけど、民間企業がそれを頼むのは難しい。ならば長崎市が泉川教授にお願いして、軍艦島クルーズはこれで大丈夫だと言ってもらえばいい。
長崎市にとっても軍艦島クルーズは貴重な観光資源なのだから、市が関与することで特定の企業に便宜をはかる、という解釈にもならないだろう。もっと行政が積極的に観光客の回復に関与すべきだと思う。