佐世保郵便局で配達員全員が濃厚接触者に認定されたため、郵便配達ができなくなっているそうだ。
佐世保郵便局クラスター 配達遅れ 最大1週間 完全復旧、早くて9月末に
同郵便局では8日までに、郵便物の集配を担当する従業員74人のうち12人の感染が判明。残り62人全員が濃厚接触者に認定された。濃厚接触者は2週間の自宅待機が求められるため、集配担当の全従業員が出勤できなくなっている。全国の郵便局でこうした事例は初めてという。
この措置に対しては色々と議論すべきことがあると思う。まず私が最初に主張したいのは「そもそも濃厚接触者の調査が必要なのか」ということで、次に「濃厚接触者の自宅待機が必要なのか」ということになる。
まず濃厚接触者の調査が必要なのか、という点について。現実問題として、感染が拡大して保健所の調査が追いつかない地域においては、濃厚接触者の調査をしないでいいことになっている。
そしてどうなったか。感染縮小期においては、濃厚接触者の調査をしなくても、感染者は順調に減少しているのである。もう今は第5波。これまでの事例を振り返れば、この事実は統計的にはっきりしている。
私の知人に関東でコロナ診療をしている医師がいるが、今は濃厚接触者の調査はやっていないということである。それでも現在、急速に感染縮小している。これが現実だ。
次に「濃厚接触者の自宅待機が必要なのか」という点。あくまでこういう措置は、利益と損失のバランスを見て判断すべきことだ。それは医学的観点からだけでなく、経済社会面まで考慮し政治が決断することだ。
無症状で他人に感染させる恐れがほとんど無い濃厚接触者を自宅待機にすることで、郵便配達ができなくなるという損失を上回る社会的利益があるのか、行政関係者は少しは真面目に考えて欲しい。
今は「コロナ陽性者を1人でも出さないようにするためには、どれだけの社会的損失があっても構わない」という観点から行政運営が行われている。長崎県知事はちゃんとバランスを取ろうとする意志が見えるが、長崎市長はコロナ対策が全てで、飲食店や旅行関係業者がどれだけ潰れようが、子どもたちの教育や課外活動、そして健全な成長にどれだけ悪影響が出ても構わない、という姿勢しか見えない。どれだけ自殺者が増えようが、コロナの死者が1人でも増えなければそれでいいという考えのようだ。多分、佐世保市長もそうなんだろう。
それはさておき表題の件。今回、県独自の緊急事態宣言は9月12日で解除されることになったが、佐世保市だけは感染が落ち着かないということで30日まで延長になった。7月1日から行われていた県民限定観光キャンペーンも、佐世保市は感染が落ち着かないということで除外されていた。
これまでも県内で佐世保市だけ感染が収まらないという状況が繰り返されてきた。これは佐世保市に何か特殊事情があると考えるほうが自然である。
私が思ったのは、佐世保の保健所は接触者の判定が厳しく、より多くの人にPCR検査をしているのではないかという疑問である。上述した通り、感染縮小期においては濃厚接触者の検査を行うこと感染縮小とは関係がない。長崎県や佐世保市といった感染者数がそもそも少ない(1日1ケタ)地域においては、たくさん検査をすることにより陽性者をより多くあぶりだし、陽性者がゼロにならないのではないかという疑問である。
症状が出ていない感染者が他人に感染させることは、ほぼ無い。陽性者自身も数日で陰性になる。そもそも発症していないんだから、検査をしない限りは自分が陽性であるという自覚もない。そういう人に対して数多く検査をして警戒期間を長引かせることは、社会的に何か意味があるのだろうか。
保健所の管轄は地域によって違う。長崎と佐世保は市の、その他の地域は県の管轄である。だから、佐世保市の保健所が県内他保健所に比べて、接触者に対する検査をより多くやっているのではないかという疑問が出るのだ。
とにかくコロナ対策に関しては世界中が科学的根拠に基づかない非科学的な思い込みをもとにして行われている。私は、中村知事は日本の知事の中ではいちばん科学的根拠を重視していると思っているので、毎回佐世保市の感染が最後まで収まらない理由について、きちんと検証して頂きたい。