2020年4月24日金曜日

長崎県医師会の「医療危機的状況宣言」は間違い

長崎県医師会が「医療危機的状況宣言」を出した。

「助かる命 救えぬ」 長崎県医師会 医療危機宣言

 長崎市内で会見した県医師会の森崎正幸会長は「クルーズ船のクラスター発生で本県は(現在の感染確認地域を上回る)『感染拡大警戒地域』に入ったと判断せざるを得ない」と危機感をにじませた。

これ、「クルーズ船の対応をしないといけなくなったから、県民に対する医療がしわ寄せを受ける」と言っているようにしか聞こえない。

私が今回の記事で注視しているのは、このメッセージを誰に伝えたいのか、ということだ。私は、県民に対して言っているようにしか読めなかった。当然、そうなんだろう。


前回も書いたが、私はクルーズ船は長崎で積極的に引き受けるべきだと思っている。平常時には「沢山来てくれ」と言っておきながら、都合が悪い時には追い返す、というのは、絶対におかしいと考えるからだ。

もちろん、クルーズ船の対応に人手を取られて、県民に十分な医療が提供できないことになるのは、本末転倒だ。だから、「県民に対する医療体制は最優先で割り当てておく。余裕がある分で、県内でクルーズ船客の対応をする。」と、はっきり言って欲しかった。

クルーズ船の対応でどれだけ医療資源を使う必要があるのかは、わからない。横浜のダイヤモンドプリンセスの場合だと、関東では足りずに愛知の病院にまで搬送された。

もちろん、当時は全員をホテルに収容したのに対し、今は重篤化しない限り船内で療養することになっているので、あの時ほどの病床が必要になる訳ではない。

とはいえ、長崎県医師会が危機感を持つのは理解できる。それを県民の負担に持ち込むのか、ということだ。

クルーズ船の対応は国がするべきことだ。だから、最初から「県民にしわ寄せが来そうになれば、早めに他県での対応をお願いするよう国に要望する」と言って欲しい。できないことまで県内で背負うことはないし、県民に対する医療サービスを低下させてはいけない。

この件に関しては、医師会だけでなく県知事もはっきり言わなければならない。「県民に迷惑はかけません。そこは国としっかり調整します。」と、医師会ではなく知事が言うべきことだ。中村知事が言えないのなら、平田副知事にお願いして言ってもらってもいい。

長崎大学も話をするべきだ。我々はもっと危険なウイルスを普段扱っているのだから、しっかり対処するので、市民が心配する必要はない、と、言わないといけない。「BSL-4の件で市民の方々には心配をおかけしています。我々はこういう事態のために日々研究をしているのです。危険な病原体の扱いには慣れています。今回もしっかり対応しますので、市民の皆様は安心して下さい。」位のことは、大学の担当者が市民の前で言えないのだろうか。


新型コロナウイルスに関するニュースは世界中にすぐ伝わる。2月に北海道知事が「緊急事態宣言」を発令した時に、私は大丈夫なのか心配した。すぐ世界に伝わるので、北海道が福島と同じような扱いを受けて、海外から人が来なくなるのではないかと感じたからだ。こういう悪評がつくと、何年も回復させることはできない。せっかく海外でも「北海道」というブランドを長年かけて築いてきたのに、この1つの宣言で、全て壊してしまうのだ。そこまで鈴木知事は考えていただろうか。

実際、発令後は福島に匹敵する位のインバウンド客減になってしまったのだ。

新型コロナ、観光に試練 星野氏「黄金週間まで続くと深刻」

やむを得なかったと思うが、北海道の「緊急事態宣言」が出たときから、北海道の需要の落ち込みは他の地域と比べて圧倒的に高くなった。緊急事態宣言の海外への伝わり方も実態よりもかなり深刻に伝わり、これは私が東日本大震災で原発事故のあった福島で経験したときに匹敵するくらいだった。インバウンドの北海道からの撤退がすごく激しかった。

特にインバウンド観光関係を重視する地域では、自分の発言が海外にどう報じられるかまで考える必要があるのが、今の時代なのだ。

「Nagasaki」の名前は、地元住民が思っている以上に海外で知られている。私がジンバブエに行った時に、昼食で同席したケープタウン在住の南アフリカ人に「日本のどこから来たのか?」と聞かれたので「長崎」と答えると、「港がある街だね」との返事があった。多分、クルーズ船関係で長崎の名前を知っていたのだろう。それ位、長崎の名前は世界に伝わっている。

長崎で製造された「ダイヤモンドプリンセス」の名前は、悪い意味で世界に伝わってしまった。しかし今回、世界中で忌避されているクルーズ船の対応を長崎でしっかりやった、ということになれば、世界中に「長崎はいい所だ」という評判が伝わるだろう。


今回の県医師会の発言が海外で否定的に報じられることはないと思うが、メッセージを出す場合は、誰がどう受け取るのかをしっかり考えてから、県民に対してだけでなく世界の人まで伝わるということを意識しなければならない。


<追記>
横浜でダイヤモンドプリンセスの対応にあたった方からも、「長崎県境を越えて負担を分散し、医療提供体制を守らないといけない」との指摘がある。


<追記2>
4月25日現在のデータで、日本国内で重症化するのは、感染者の2%程度である。当然、検査されていない感染者も多いので、実際の重症化率は、もっと低いと考えられる。

「東洋経済オンライン」より引用
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/