2020年1月24日金曜日

「対馬学フォーラム」の成果について考える

2019年12月8日に「対馬学フォーラム2019」が開催された。
対馬に関するさまざまな分野の研究発表会であるが、この内容が素晴らしすぎて、本当にびっくりしている。

何が素晴らしいかというと、大学の研究者だけでなく、地元の小中高生も発表していることである。発表しているということは、当然事前に研究をしている。

郷土についての研究を小さい頃から行うということは、郷土愛を育む上でこのうえない効果を生む。私のように大学で研究者になるための教育を受けてきた人間からすると、小さいうちから研究活動を行うことは、本当に素晴らしいことだと感じる。

但し、手放しで喜べない部分もある。下手に研究に興味を持ってしまうと、長崎県の現状であれば県外に優秀な人材を放出する結果につながってしまうからだ。

教育と就職・就業は、本来密接に関わるべきものだ。しかし長崎県では大きく分離している。高校では「いい大学」に入れることだけを考えていて、その後その人材をどう長崎に戻すのか、という視点が完全に欠落しているのだ。


研究に興味を持った高校生が出てくるのであれば、民間で研究をできる環境が乏しい以上、県が研究に携われる職場を用意しないといけない。現状県内にほとんどそういう職場がないから、学歴が高くなるほど、県内で職を見つけるのは困難になる。私も今でも相当苦労しているし、高学歴者を大事に扱わない長崎県の実状をここまで見せつけられると、早く県外に脱出したいと思っているのが現実だ。そもそも高学歴者を大事に扱え、と言うのがふざけていると言われるし、学歴が高ければ高い程、頭を下げないと生きていけないのが長崎の社会だ。だから頭を下げるのが嫌いな私は長崎では生きていけない。

ところで対馬で研究に興味を持った場合の就職先としては、市の学芸員しかない。果たして対馬市に学芸員のポストはいくつあるのか?

それ以外には、本来であれば高校の先生が最適である。

ところが長崎県の高校は、補習や部活に忙しすぎて、先生が独自に研究活動を行うのは困難である。そもそも先生に研究活動をさせようという空気が、多分今の長崎県教育委員会の中には無いはずだ。

私も高校の先生になろうかと考えたことがあるが、あまりに長崎県の高校はブラックすぎるから、採用試験を受ける気にもならなかった。朝から夜まで働かされて、夏休みも1週間位しかない。東京都立高校の先生の労働時間を見ると、冗談じゃないが長崎県の教員になろうという気にはならないし、ここを読んだ長崎県の教育関係者は、「そういう自分のことばっかり言うような人は、長崎県の教員になって欲しくない」と考えるはずだ。

また多すぎる強制補習授業の悪影響は、研究をしたい高校生の活動にも悪影響を与える。長崎県の教育を受けてきた私からすると、よくまあ学校で朝から晩まで補習だ部活だと拘束された上で、「対馬学フォーラム」の発表のための研究活動をできる高校生がいるもんだなぁと、感心せざるを得ない。

そもそも何のために補習授業をするのか。大学受験のためではなく、完全に先生が生徒を管理するための手段にしかなっていない。

今どき学科試験だけで大学入試を通過しているのは、入学者の半分しかいない。あとは推薦入試・AO入試などで入る。どう考えても補習授業を受けてペーパーテスト対策の勉強をするより地域に関する研究をした方が、入試には有利になるのが今の時代なのだ。

そうであれば、ペーパーテスト中心の受験を目指す人だけが補習授業を受ければいいのだが、個性を認めない長崎県の教育界でそれは許されない。全員同じことをしないといけないのだ。もちろん、同じことをさせた方が先生が管理しやすい、というのが根底にある。推薦で大学入学が決まった人まで「和を乱さないため」に補習授業を受けさせられるような状況なのである。

高校の先生として研究ができる人を採用しようという気すら、長崎県側にない。オリンピック代表になれば教員採用試験の一次試験免除になるという制度はあっても、博士の学位を持っていれば一次試験免除という制度はない。学術よりスポーツのほうが優先されるのが長崎県の教育界なのだ。私も一次試験免除になるのであれば、間違いなく長崎県の採用試験を受けていた。実際に先生になるかどうかは別にしても。


仮に研究できる人間を高校教諭として採用したとしても、異動があるから対馬にずっと居られないということは、今の制度では避けられない。しかし、これも制度を変えれば済むことだ。異動を少なくするのは私も反対だが、中学と高校を両方異動するように制度を変えれば、対馬で長期間勤務することが可能になる。今でも採用試験の段階で中学と高校を一括採用している都府県は存在するので、長崎県でもできないことはない。


「対馬学フォーラム」の開催などで対馬市がどれだけ頑張っても、教育職の人事は県なので、どうしようもない。だからこそ、県と市町が一体になって、就業対策を立てないといけないのだ。