2011年11月16日水曜日

新長崎県立図書館は大村市へ

県立図書館の老朽化に伴い、改築してどこに新図書館を作るのかということに関して、長崎市と大村市で誘致合戦が行われている。

大村市の言い分は、県土の中央に位置するので、県全体からのアクセスが便利だ、という点、長崎市は、長崎研究の拠点として、研究者が多くいる長崎市に立地すべきだ、という点が、それぞれ最大の主張のようだ。

実際に県立図書館がどの程度研究拠点として活用されているのか私は全く知らないのだが、一応、大学に長い間身を置いた研究者としての視点から、長崎市立地の必要性を考えてみる。

正直言って、県立図書館でしか得られない資料を活用するために、年に5回以上県立図書館を利用しているという長崎市在住の研究者は、せいぜい1桁じゃないかな、と思う。これは全く現実と外れた数字かもしれないが、その辺について、長崎市立地を主張する人には、是非数字を出して欲しい。

それで、その人たちが長崎市に住んでいるからといって、図書館が長崎市に立地する必要があるか、といえば、かなり疑問である。例えば週に1回位図書館に行くとしても、長崎から大村に行く、というのは、研究者だったら普通にできることだ。というか、その位やらなくて研究者を名乗るな、と言いたい。現実には毎日大村から長崎まで通勤通学で通っている人も沢山いるんだから、行けないはずはない。

ここからが本題なのだが、長崎研究(もちろんここでの「長崎」とは「長崎市」ではなく「長崎県」だ)を担う人間が長崎市に集中するのか、集中させるべきなのか、ということを考えなくてはならない。

まず、長崎市周辺の大学で、長崎研究の拠点を作ろうと思った所で、それだけのポストを用意することができるのか。まず無理でしょう。そんなポストがあるのなら、是非私をどこかの大学で雇って下さい(苦笑)。今ある研究ポストの中で議論をするのが現実的である。

そして、長崎県の研究をする人間を増やしたいのか、となれば、当然増やしたい、となるだろう。では、具体的にどういうポストの人が研究者として増やせるのか。これも現実でいえば、公務員(学芸員・高校教諭など)しかないと思う。それから、未来の研究者として、大学生も考慮に入れる必要がある。

まず大学生からいえば、県内の大学は長崎市内だけにあるのではない。佐世保にもある。社会人より学生の方が交通弱者なので、アクセスのいい場所に図書館があった方がいいのは、議論の余地がない。となると、JR大村駅近辺が最適である。

次に公務員。これは県内全域に勤務・在住している。こういう人たちの研究環境を考えてあげれば、やはり県全体からのアクセスが便利な場所に図書館を作るべきだ。例えばの話、長崎市内の高校に勤務していた先生が佐世保に転勤になったとする。これで極端に図書館へのアクセスが悪くなって、研究を継続させることが困難になる、という事態は、容易に想像できる。

正直言って、大学の先生は、多少アクセスが悪くても無理してでも通って欲しいと思う。他の仕事に就く人たちの方を向いて、アクセスを考えるべきだろう。

もう1ついえば、一支国博物館との連携も考えるべきだと思う。そうなると、空港がある大村市に新図書館を立地させた方が絶対にいい。


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私は以前東京に住んでいた時、東京の人は何か作る時に、「東京に作って当然」という言い方をすることをよく感じた。

地方出身者からすれば、「それは東京以外の場所に作るべきじゃないかな?」と思うようなものでも、「東京ありき」という風潮があって、ちょっとおかしいんじゃないかな、と感じていた。

今は長崎市に住んでいる。長崎市も県都であるので、立場は逆になった。上のことの裏返しで、「ほんとうに長崎市に必要か?」ということを、つねづね考えないといけないと思っている。

県庁舎にしても県立図書館にしても、「ほんとうに長崎市に必要なのか?」ということは強く意識するようにしているが、こと県立図書館に関しては、大村市立地の方が絶対にいいという気がする。