2020年4月24日金曜日

クルーズ船乗員の不安感は長崎市民の比ではない

前回の続き

「市民が不安だからクルーズ船を着岸させるべきではない」という意見がある。
これは余りにも自分勝手な意見ではないか。
クルーズ船の乗員がどれだけ不安に思っているのか、想像して欲しい。

修繕中だった「コスタアトランチカ」号に加え、「コスタベネチア」号が補給のため長崎港に着岸した。

この船は、どこも受け入れてくれる場所がないから、乗員を乗せたまま長崎近海をうろうろしていた。いよいよ燃料と食料が尽きてきたから、補給するために長崎港に一時的に着岸したのだ。

少しでも船員たちの気持ちになれれば、どれだけ不安感を覚えているか、想像できるだろう。この状態で船内にウイルスが蔓延すれば、いよいよ受け入れてくれる場所はない。いつ船を降りられるかも、わからない。降りられても、自分の国に帰れる保証はない。帰れた所で、この仕事を続けられるかどうかも、わからない。船会社が倒産することだって考えられるし、今まで通りの便数でクルーズ船が就航できることは、当分あり得ないのだ。

だからこそ、長崎港で受け入れてあげるべきだということは、前回書いた。長崎でなら、十分対応可能なはずである。


そもそも、コスタアトランチカ号の船員がどこから感染したのかは、まだ不明である。長崎市内で市民から感染した、という可能性だって、あるのだ。

欧米諸国で一気に感染拡大したのに比べて、日本での拡大の勢いが遥かに小さいのは事実だ。何故拡大しないのか。理由はいくつか考えられているが、有力なのは「すでに感染した人が多くて抗体を持っているから、罹らない人が多い」という説である。

今、諸外国では抗体検査を進めている。抗体検査をすれば、発症していなくても無自覚で罹患していて、すでに免疫ができているかどうかがわかる。外国の調査によると、思ったより遥かに多くの人が抗体を持っていたという報告が、あちこちから出てきている。ニューヨークでは14%の人に抗体があったと発表されている。

米ニューヨーク州 約14%に抗体確認と発表 コロナウイルス


日本にも、すでに去年からウイルスが入ってきていたという話は、結構耳にする。私の知人の関西在住者も、今思えば明らかに新型コロナウイルスの症状で発熱していたし、関東在住の医者は、1月に診た肺炎患者の症状は、実は新型コロナじゃなかったかな、という話もしている。

医者から見ても、「ちょっと変だったけど、治ったからいいや」という症例が、実は相当あるのだ。

長崎市内だって、あれだけ中国人が来ていたのだから、全くウイルスが市内に出ていないとは考えられない。すでに罹患している人は、相当数いるはずだ。私自身も、1月にいつもと症状が違う発熱があった。あれだって、新型コロナだったのかもしれない。

日本でも相当数の無症状感染者がいる、ということは慶応義塾大学病院の検査でわかった。なんと無症状者のうち6%の患者が陽性だったのだ。

慶應大病院「新型コロナ以外」入院患者、5.97%で陽性


となると、クルーズ船の乗員から長崎市民が感染する危険性よりも、市民から乗員に感染させる危険性の方が、高いのかもしれない。


と、色々考えても仕方がない。話を元に戻せば、「困っている人がいたら助けてあげる」というのが人として当たり前のことであり、長崎ではクルーズ船の乗員を助ける能力はあるのだから、クルーズ船を排除するのではなく受け入れる方向で考えるのが、当然の答えになると私は考える。

2020年4月23日木曜日

困っている人がいたら助けてあげるのが人として当然の行為

前回の続き

修繕中のクルーズ船「コスタアトランチカ」号だけでなく、物資の搬入のために別のクルーズ船も長崎港に入港している。

それに対しても「入港させるな」という声があるようだ。

クラスター発生のクルーズ船と同会社が運航のクルーズ船が 長崎港に入港


何故、困っている人に対して、助けてあげようという気になれないのか。
乗員の人たちは食べ物がないと生きていけない。世界中の港から寄港を断られている中、長崎で助けてあげようという気に、どうしてなれないのか。

ウイルスが怖いということもあるかもしれない。しかし、横浜でダイヤモンドプリンセス号が停泊していたからといって、横浜で感染が広まったという話は、全くない。何も怖がることは、ないのだ。きちんと対応すれば、何の危険もない。

長崎大学は感染症の分野で世界でもトップクラスの実績がある。だからこそ、長崎で対応するべきなのだ。今のコロナウイルスより遥かに危険な所で研究を進めている方々がいるのだから、今回のクルーズ船の対応には、全く問題がないはずだ。

長崎大学の専門家は、ダイヤモンドプリンセスの事件を見て、「自分が手助けしたい」と強く思っていたはずだ。研究者って、そういうものである。自分にその能力があるのなら、何かあった時に、すぐその知見を活かしたいと思うものだ。思わないのであれば、税金を使って研究者を支援する必要はない。

今度は長崎に出番が回ってきた。「今度こそは、自分たちがうまくまとめてやる」という気持ちで燃え上がっているだろう。


困っている人がいるのであれば、助けてあげられる人が助けるのが、当たり前のことである。

福島の原発事故の後、福島産の桃を長崎で大量に販売した。

風評被害が大きく、福島産というだけで、日本のどこでも店頭に置くことができない状況だった。しかし、長崎の人だからこそ、食べ物に被害はないということは知っている。だから、長崎で沢山売って、福島の人に深く感謝された。

事故の年だけでなく、その後もずっと桃のシーズンになると福島市長が長崎に挨拶に来るようになった。私の会社の小さな事務所にまで、福島市長が挨拶に来た。後でたまたま福島市から長崎市に出向で来ていた職員の方とお話しする機会があったが、福島市長が桃の季節に長崎に挨拶に行くことは、最重要事項として申し送りされているそうだ。


後で感謝されるために助けてあげる、というのは間違った考え方だが、困った人がいるのであれば、助けられる人が助けてあげるというのは、当たり前のことだ。クルーズ船に関しては、積極的に長崎で手助けするべきである。

2020年4月22日水曜日

「コスタアトランチカ」号への対応は人道的見地から行うべき

長崎港で修繕中のクルーズ船「コスタアトランチカ」号の乗員から、新型コロナウイルス感染者が発生した。

長崎のクルーズ船、感染拡大懸念 乗員「家に帰りたい」


長崎からすぐに出ていって欲しい、という声も出ているようだが、ここは人道的見地から冷静に考えて欲しい。

クルーズ船は感染拡大を恐れて、各国から寄港を拒否されている。
そうなると、乗員はどうすればいいのだろうか。

国に帰ればいい、と簡単に言うかもしれない。でも、多分だが、フィリピンは帰国を許さない。そして、許されないまま、何ヶ月も船内での生活を続けて、修繕中であるにも関わらず、長崎でじっと船の中に留まっていた、という事実はしっかりと受け止めないといけない。

国に帰りたくても帰れない人は沢山いる。日本人だって、アフリカから帰れない人が何百人もいるのだ。クルーズ船には世界中の乗員がいるので、帰りたくても帰れない人たちの事情にも配慮するべきだ。

アフリカ15カ国から10ルートで帰国 茂木外相明かす



日本はダイヤモンドプリンセス号への対応経験があるので、対処にはもうノウハウがある。当然、長崎港のことであっても、国の協力は確約されている。

日本の方針として、軽症者はホテル待機という方向が出ている。幸いこの船には乗客が乗っていないので、船内に部屋はあり余るほどある。そこで待機すればいいのだ。

重篤化すれば長崎市内の病院で世話をすることになるだろう。しかし、若者の多くは重篤化しないので、うまく行けば船内から誰も外に出ずに全員快方へ向かうことも、少なくない可能性として、ある。

クルーズ船の乗客は高齢者が多い。しかし乗員は若い人が多い。今船内にいるのは乗員だから、船内で重篤化させない方向で努力して、外に出さない努力をすることが大事なのだ。

(東洋経済オンラインよりhttps://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/

これが年齢別の感染者の状況である。40代以下なら、ほぼ重症化していない。

長崎市民であれば、市内を歩いているクルーズ船の船員らしき人を見かけたことはあるだろう。みんな40代以下だと思いませんか?

フィリピン籍の船員は、当分国に帰れないと思う。そうなると、きちんと健康面の確認が取れれば、伊王島のホテルに滞在させてあげてもいいだろう。

新型コロナウイルスは、管理されていれば何も恐れることはないのが現状である。下船時に全員の感染チェックをして、そのままホテルに滞在してもらうというのが、人道的に見た正しい方針だと思う。


そして、いい対応をして貰えたと感謝されて、以後の修繕受注に結びつける方向を目指すのが、長崎にとって最良の方針である。

2020年3月7日土曜日

新長崎駅に南口設置の可能性が出てきた?

長崎新聞に以下の記事が出ていた。



前田哲也議員が県議会でこの問題に関して質問したようだ。

この件に関しては私はかなり昔からこのブログで指摘していた。

前田哲也議員にも2年前に話をして、県議会で質問して頂いた。


それが止まっていたのだが、今回また質問されたようである。
ちなみに今回の質問に際し、私は全く関わっていない。

南口設置に関しては、JR九州がかたくなに反対していたのだが、さすがに新駅の形が見えてきて、利用者が新駅の姿をイメージできるようになってきたら、反対するのは分が悪いと思ってきたのではないだろうか。

JR九州は新幹線より駅ビル事業のほうが重要


何にせよ、かなり遠回りはしたが、いい方向に向かっていくのであれば、それはいいことである。

ただ、ここに至るまで、ずっと私達が指摘していたのに、完全無視を決め込んでいた長崎市および田上市長の態度はどうなのかについて、市民の方々には考えてもらいたい。

2020年2月19日水曜日

新長崎駅へのアクセス問題は副知事の力で改善へ

ここの話の続きの動きが出た。

新幹線開業に向け長崎駅周辺の交通網を再検討


新長崎駅の駅舎まで現在の駅前電停から歩かせる、というのが長崎市の方針だったが、平田副知事が動いたことにより、動く歩道付きの歩行者デッキで結ぶという方向になったようだ。

さらに、バスターミナルも現在地で改修するという。今の長崎市の計画では、待合室だけ室内でバスへの乗り降りは路上で行うことになっていた。それをちゃんと建物の中でできるようにするようだ。

平田副知事がやる気を見せていたのは知っていたが、まさかバスターミナルまでとは思わなかった。

あとは改札口を県庁舎側にも作らせられればいい形にはなるのだが、これはJRが新アミュプラザへ人を誘導したいということで難しいと、直接お会いした時に副知事本人が話していた。

我々のような市民団体がいくら動いても全く無駄だったことが、権力を持っている人がやれば、あっさりと動いた。副知事は選挙で選ばれた人ではないが、まともな思考力と実行力を持った人を権力者に据えないと地域はダメになるという、いい事例になりそうだ。

しかし田上市長は何を考えていたのだろうか。そういう人を市長に選んだのは市民なんだから、結果に何を言っても始まらない。

2020年2月7日金曜日

長崎市の新ホールは熊本城ホールを見習いグランドホテル跡地に

長崎市が建設する文化ホールの場所が、県庁舎跡地ではなく現市役所跡地になることが決まった。

文化芸術ホールは市役所跡地 長崎市長表明、県庁跡を断念


私は4年以上前から県庁舎跡地は公園にすべきだと主張していたので、何を今さら、という感じである。

このことに限らず、長崎市のまちづくりにはグランドデザインがないことが最大の問題である。とにかく場当たり的で、その時に空いている公共の土地を使おうという発想しかない。

本来まちづくりというものは、計画区域全体の施設配置を考えた上で、個々の計画に落とし込んで行かないといけない。もちろん、公共用地だけでなく民間の土地も合わせて計画に入れて考える必要がある。

計画を作る際にも、行政にだけ任せるのではなく、土地所有者も含めた民間人が一緒になって考えないといけないのは当然のことである。この点において長崎は民間サイドにも大きな問題があると思っている。以前指摘したように、商店街の人達は県庁舎や市庁舎については行政に対して色々文句を言うくせに、グランドホテル跡地は長年放置したままだ。グランドホテルは民間の土地なのだから、本気でまちづくりを考えるのであれば、役所に頼るのではなく民間対民間で解決策を考えるのが筋なのである。

今さらの話にはなるのだが、考え方として新ホールをグランドホテル跡地に建設する枠組みについて提案したい。その際に、先日完成した熊本城ホールが参考になる。

熊本城ホールは、元々民間の施設である熊本交通センターがあった場所に、新たなバスターミナルとともに、民間による再開発事業として建設された。それを完成後にホールの部分だけ熊本市が買い取ったのである。


熊本城ホールについて


このホールは熊本市の中心部にあり(熊本駅からは遠い)、一階がバスターミナルであることもあり、大変便利である。私も大ホールのこけら落とし公演だったはずの森高千里コンサートに行った(後日、森高公演の1週間前に山下達郎が入ってこけら落としになった。市長直々に頼んだとか。)が、他所から行くにしてもバスターミナル併設という立地はほんとうに便利であった。

長崎市のホールも、福岡銀行が中心になってグランドホテル跡地を再開発し、バスターミナル併設で建設すればいい。

行政が民間の再開発を後押しするつもりらしいから、ここを最初のケースとして打ち出せばいいと思う。

長崎市が2年連続で転出ワースト1位 民間の再開発を後押しする秘策は


2020年1月25日土曜日

対馬への外国人観光客誘致は、福岡と釜山を結ぶ導線上で考えよう

経済地理学会対馬特別例会での話の内容は書かない、と書いたけど、ちょっとだけ書く。

1月24日付けの新聞に、以下の記事が出ている。

「福岡-釜山」高速船 「日韓以外」利用客3倍を目標に

(毎日新聞へのリンク)

まあ、ね、タイミングが悪かったよね。JR九州が巨大な高速船を博多釜山航路に2020年7月から投入する、という計画があって、今の日韓情勢を考えると、客が乗るはずがないという状況だ。

申し訳ないが、日韓情勢に関係なくこの計画は最初から難しいと私は思っていた。博多−釜山航路を利用する客は、安く海外旅行ができるからという理由が大きく、豪華な船でのクルーズを楽しむという需要は、ほぼ無いからだ。

それでも就航が決まった以上は、搭乗率を上げるためには日韓以外の観光客を乗せないといけない、という事情だ。
同社は長期滞在する傾向がある欧米豪の訪日客に注目。九州と釜山を同じ観光圏と位置づけ、旅行中の周遊先として釜山をアピールして高速船の利用を促す。
欧米豪の観光客に着目するのはいい。しかし、わざわざ博多から釜山を往復するだろうか。それは難しいと思う。


私が対馬の例会で提案したのは、特に欧州客を福岡in、釜山outなどの行程のなかで、対馬を組み込んでもらおうということだ。

対馬には森があり城跡があり神社仏閣も多いと、西洋人に好まれる要素がふんだんにある。熊野古道のような売り方ができれば、西洋人の観光客を集めることも十分可能だが、国土の端にあるという捉え方ではアクセスが悪く観光客誘致では不利である。

そこで、2020年夏ダイヤから就航が決まったフィンエアのヘルシンキ−釜山便を利用して、片道は福岡便、片道は釜山便という使い方を売り込めば、対馬の地理的不利性が解消される。さらにヨーロッパから釜山へのインバウンド客は少ないだろうから、そこは福岡・対馬と釜山が協力することでインバウンド増加を図るようにすればいいのだ。

韓国は仁川のハブ機能を強化する国の航空政策により、長距離便は仁川のみに就航させてきた。釜山にとってその政策を越える待望のヨーロッパ便になる。この路線を維持するためにもインバウンド増加は必須条件なのだ。福岡へのフィンエアー便にしても、インバウンドが弱い関係から夏季のみの就航に留まっているので、釜山と協力してインバウンド増加を目指すのは、お互いにとって悪い話ではない。

JR九州も、福岡から釜山を往復することを売り込むのではなく、片道利用を推進する方向で行く方が現実的である。


ところでアジアからのLCC路線は、九州の就航地として最初に福岡、次に鹿児島を選ぶ傾向がある。この事実を聞いて「鹿児島って人気があるのか」と思うだろうか。申し訳ないが、観光地としての人気は鹿児島より長崎の方が高い。それでも長崎ではなく鹿児島を選ぶのは、片道福岡、片道鹿児島の利用で、九州を縦断する観光客が見込めるからだ。

九州内の移動手段としてJR九州とバス会社は、いずれも九州乗り放題チケットを販売している。こういうチケットを利用し九州を縦断したいと考える海外客が多くなるのは、容易に理解できる。

香港と台湾は、日本へのリピーターが多いことで有名だ。LCCを使って年に何回も日本を訪れる人が多い。そして、香港と台湾からのLCCは、福岡と釜山の両方に就航しているのだ。

そうなると、福岡と釜山を航路で結んでいるJR九州が、福岡釜山移動に加え対馬周遊が可能な割引チケットを機内で売ったりすれば、アジアから対馬への旅行客は一気に増えるだろう。


ながさき地域政策研究所が作成した「対馬観光再生ビジョン提言書」には、福岡空港を経由してアジア諸国からの観光客を呼び込むと書かれているそうだ。しかし、福岡からわざわざ対馬を往復しようというアジアの観光客がどれだけいるのだろうか。それよりは福岡と釜山を移動する途中で対馬を訪れてもらうほうが、可能性は遥かに高い。

行政が関わると、国をまたいだ施策を取るは難しい。しかしこのケースならばJR九州が1社で対応できる話だ。現在LCCの香港エクスプレス機内でJR九州乗り放題チケットを販売していて、かなり売れている。こういう取り組みを博多−比田勝−釜山航路でも行えばいいのだ。