2019年2月14日木曜日

人口減少対策は雇用環境の改善しかない

長崎県、長崎市の新年度予算案が発表されて、どちらも人口減少対策を重要課題として位置づけ予算が大きく配分されている。

長崎県予算案 人口減対策に重点


それはいいのだが、果たしてどれだけ実効性のある施策なのかは、疑わしい。とにかく予算をつけるから何か施策を考えろという知事や市長の指示で、担当部署が何でもいいからとにかく考えた、としか思えないような施策が並ぶ。

そもそも他県や他市に比べて人口が減っているのには理由があり、その理由を潰すような政策を打たないと、貴重な税金をつぎ込む意味はない。

そして最大の問題は、関係者はみんなその理由がわかっているのに、それを言わずに他のことを言ってごまかしていることだ。


理由は何かといえば、長崎の企業がブラックだから、というである。関係者と話をすると、誰でもそう答える。

長崎県の1人あたり県民所得は全国で最下位争いをしているが、数年前それに加え労働時間が一番長いという統計が出て、関係する県職員が真っ青になった、ということがあった。

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●長崎県の平均労働時間が3年連続全国一


こんなブラックな県で働きたいと若者が思うだろうか。

私も長崎の民間企業で労働者として働いていた経験がある。その時にまわりの人たちと話をしていてわかったのが、「なぜこの企業で働いているのか」という問いに対して、その答えはほぼ「長崎の企業だから」なのである。「この企業が働きがいのあるいい企業だからだ」という答えは、無いとは言わないが、最大の理由にはなっていなかった。

これはどこの企業でも似たりよったりだ、ということは、長崎の人たちと話す中でわかってきた。長崎で働きたい人は多いが、労働条件を考えると、働きたい企業がない、というのが現状なのである。


では県や市が出している施策はどんなものがあるのか、2月14日付けの長崎新聞で見てみる。

まず県の施策。
福岡や首都圏の大学生に、県内企業の求人情報を紹介したり、県内企業の説明会の日程を伝えたりするキャリアコーディネーターを福岡と東京に各1人配置。
それはいいんだけど、福岡や首都圏の大学生が、県内企業の労働条件と福岡や首都圏の企業の労働条件を比較するんですよ。そこで県内企業が選ばれますか?

こういうことをするのであれば、そのキャリアコーディネーターが県外企業の労働条件を県内企業に見せて、「こういう条件でなければ、長崎の企業は選ばれませんよ。」と伝えて労働条件の改善を図る、とかするのであれば、有効な施策につながると思う。最低でも年間休日120日ですよ。土曜半ドンとか、誰がそんな会社で働こうと思います?有休消化率までは、今の段階では言いません。


次に長崎市の施策。
移住・就職相談員を含む6人体制の専門部署を創設。JR長崎駅周辺に相談窓口「ながさき移住ウェルカムプラザ(仮称)」を開設するほか、子育て世帯の移住者らへの支援金を導入する。
上と同じことなんだけど、情報を伝えた所で、それで長崎の企業が選ばれるかどうか、という所に踏み込まないと、実効性のある施策にはならない。

時々知事や市長から「地元で働くことの良さを知って欲しい」みたいな言葉が発せられるのを聞くが、いや、地元で働きたい人は沢山いるんだよ。でも働きたい企業がないから、仕方なく県外で就職しているんだよ、ということを、強く言いたい。

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こんなデータもあるんだから、「長崎で働きたくないから県外で就職してる」って訳じゃないってのは、わかるでしょ?

県内企業は儲かってないから給料が払えない、というのは、わかる。でも、だったら長時間働け、というのは、違う。休日を増やして労働時間を減らすのは、工夫すれば出来ないことはない。経営者側にその気がないだけだ。

こうなったのも、逆説的に言えば県内で働きたい人が多いからだ。つまり、県内で働きたい人が沢山いるので、労働条件が悪くても、企業は求人に困らなかった。そして、労働条件を求める「優秀な」人は、どんどん県外に流れて言った。普通に考えれば、「地元を離れたくないから労働条件は悪くても就職する」という人よりも、「地元企業よりは労働条件のいい、『自分を認めてくれる』県外企業に就職する」人のほうが、優秀だろう。それを郷土愛が足りないとか言うのは、おかしい。

そもそも県内企業の経営者の発想が、おかしい人が多い。「社員は会社の奴隷だ」という感じで、「働く以上会社に全て尽くすのが当然だ。プライベートは無い。」という社員の扱いが多すぎるのではないのか。本来会社と社員は同列で、お互いにとってメリットがある会社で働く、ということだ。上に『自分を認めてくれる』という表現は、そういう部分を意図している。会社側も社員個人の能力を尊重し、それ相応の扱いをしないと、優秀な若者は定着しない。勘違いしている若者が辞めてくれるのであれば、会社にとってもメリットだし(苦笑)。


ここで書いていることは、「県や市の職員は何もわかってないから書いてやる」というような気持ちは全くない。みんなわかっている。それを言わない。行政だけじゃなく、マスコミも言わない。唯一長崎新聞の記者コラムで、「選べる職場がないから県外就職をしているのだから、県外就職をしている人間が悪いというような言い方はやめて欲しい」というようなことが書かれていた位だ。

県内企業に配慮して、思っていることを言わないのを続けているから、状況が改善されずに人口流出が止まらないのだ。行政側からもはっきり本当のことを言うようになって欲しい。行政が言わなくてもマスコミは言えると思うのだが、どうだろうか。もうこの件で政官財のなれ合いは、やめましょうよ。

2019年2月10日日曜日

長崎港・空港からの農産物輸出が増えないのは業者のせい?

西日本新聞に気になる記事が出ていた。

長崎の貿易現状は「鎖国」 日銀支店リポートで指摘 空港と港湾 機能に課題 [長崎県]


長崎港や長崎空港からの農産物輸出が他県に比べて少ない、という話。

リポートは「空港の24時間化を含め、需要地のニーズに合わせた物流体系の確立が急務」と総括。貿易の玄関口として(1)港湾や空港のインフラ整備(2)生産地から港湾や空港までのアクセスの整備(3)需要地に向けた航路、航空路の拡充-などの遅れている対応を列挙した。平家達史支店長は「これまでは長崎の中で商売していれば何とかなったので、販路の開拓を他地域よりしてこなかったのではないか」と辛口に評価する。関係者はどう受け止めるか。

関係者として言わせてもらうと、「何を偉そうなことを言ってるの?」という感じで、こんな訳のわからないことを言っている人が発言力を持っている時点で、長崎の経済は終わっている、という印象である。


私は水産物流通についてはわからないので、農産物についてだけ書く。

まず販路開拓。「長崎の中で商売していれば何とかなったので」云々のくだり。何を言ってるのですか、という感じ。今、東京のデパートやスーパーに行けば、長崎県産のみかんやいちごは普通に売っている。私の印象だと、長崎県は他県と比べても、東京での営業は相当頑張っている。長崎は東京から遠いため運賃がかかるから、東京で売るのは相当不利な地理的条件にある。それでもこれだけ東京の店に商品が並んでいるのだから、「販路の開拓を他地域よりしてこなかったのではないか」と言われても、「何を見てるんですか」という感じになる。もっとも、この人の他の発言を見ても、「何も見ていない」という印象しか私は持っていないのだが。


次に輸出に関していえば、「なぜ農産物の輸出をしなければならないのか?」という根本的な問題がある。輸出は基本的に儲からないからである。

私の印象としては、果物が世界一高い値段で売れるのは東京である。となると、生産者は東京で売った方が一番儲かる。一番儲かることを目指すのが、経済原理としては正しい。

では将来的にどうなるのか、という視点から考えても、やっぱり将来的にも値段という点では、香港やシンガポールなどのほうが東京より高い値段で売れる、ということは、まあ無いだろうというのが、実際に商売をやっている私の感覚である。もちろん小売価格の話ではなく、農家が受け取れる価格の問題だ。

それでも実際に輸出をしようと頑張った所で、福岡や関東関西の業者に勝つのは、相当厳しいというのが現実である。大消費地の業者は長崎の業者に比べて品揃えが豊かで、それだけでも海外の業者との取引で優位に立てる。そして輸出ルートをすでに作っているので、そこに長崎から新興業者がルートを作って営業をする、というのは、余程のことがないと成功しない。是非日銀長崎支店の平家達史支店長に、実際に営業をしてもらいたいと思う。

長崎港や長崎空港からの海外への貨物便が少ない、という点については、実はそんなに営業上の障害になっている訳ではない。福岡から香港やシンガポールへの農産物輸出でも、船なら週1回、飛行機でも週1回や2回という業者が普通である。福岡港からでも釜山港経由で輸出されるケースも普通で、長崎港の便数が少ないことがデメリットになるという印象は、今のところ感じていない。

最大の問題は、その週1回分のコンテナを満載にするだけの商品を運ぶ営業力がない、ということである。そんなに簡単に営業ができる程、商売は甘くない。


では何が現状問題なのかと言えば、あくまで私の印象だが、県の姿勢である。少なくとも農産物輸出の部署からは、長崎港や長崎空港から農産物輸出を増やそうという姿勢が、全く感じられない。

私も以前から、特に香港は水産物の輸出が多いから、貨物輸送も見込めるということで香港の航空会社の誘致をすればいいんじゃないですか、と県の農産物輸出担当者に話をしていたが、多分、それが空港担当の部門には全く伝わっていない。

また、今回香港エクスプレスの就航に合わせて、福岡から香港エクスプレスの貨物輸送を行っているフォワーダーさんから、長崎でも貨物を扱うように香港エクスプレスに頼んでみてもいいですよ、という話をされたが、残念ながら売る相手がいないので、販路が開拓できるまで待って下さい、という返事しかできなかった。


基本的に貿易は民間がやることなので、何でも行政にお願いするというのは間違っていると思う。しかし、こういう業者間の調整をするのが行政の仕事ではないだろうか。

実際に長崎県の農産物輸出担当部門がやっているのは、福岡や関西の輸出業者に補助金を入れて、福岡や関西からの輸出を増やす施策なのである。長崎の地元業者と手を組んで、長崎港や長崎空港からの輸出を増やそう、ということは、全くやっていない。

日銀長崎支店の平家達史支店長も、業者の努力が足りないという前に、県の姿勢はどうなんですか、と言う方が先じゃないだろうか。

また行政側も、こういう数字を見て推測しているだけで現実のわかっていない人の話をありがたがって聞いているから、長崎の経済が発展しない、と、常々思っている。

2019年2月3日日曜日

「長崎サミット」で駅周辺事業が採り上げられる

2月1日に行われた「長崎サミット」で、駅周辺事業が採り上げられたようだ。

長崎新聞のネット記事に上がって来ないので、画像を貼り付ける。


まあ何を今さらの話だが、長崎新聞もやっと今になって図解入りで採り上げてくれた。

実は長崎新聞の記者には、今まで何度も採り上げてくれと頼んではいたのだが、全く相手にして貰えなかった。もちろん私が1人で言っていただけではなく、市議会や県議会でも議題になっていたので、長崎新聞としても採り上げる価値はあるでしょ、とお願いしていたのだが、「長崎サミット」という舞台で話題になって、やっと初めて大きく紙面に載ることになった。

ちなみにNHKでは、この話題は無視されている。

長崎サミット「人口減対策強化」
(NHKのWEBサイトへのリンク)

NHKの記者にもこの件について話したことはあるのだが、全く話題にする価値はないと思われているようだ。


ここで気になったのが、トランジットモール線が駄目になった理由。記事を引用する。

市はかつて路面電車の軌道を駅側に引き込む計画を立てたが、交通量の激しい国道をまたぐため、通過する乗客の利便性低下などを理由に電車事業者に拒まれ、断念した経緯がある。

トランジットモール線は、新駅構内に入ることで所要時間が余計にかかるので、「通過する乗客の利便性低下」を理由に電鉄側が拒否したのだ。駅前の交通量が多くて断念したのは、サイドリザベーションや横断歩道の設置。

さすが長崎新聞の記者の後藤敦さん、勉強してないしこの話題で私が散々ここに書いてきた内容を全く理解してないね、と思ったのだが、何と「交通量が多いからトランジットモールを断念した」と言ったのは田上市長だった。そう思って長崎新聞の記事を読み返すと、記者がそれは違うと思いつつ、田上市長が言ったことだから、書いておくか、という理由で書いたとも読める。ただ、トランジットモール線断念とサイドリザベーション断念の違いが全くわかっていない、とも読める。

長崎サミット 駅前の交通網整備に課題
(KTNのWEBサイト。田上市長発言の動画あり)

とりあえず市長がこの件について全く興味がないということは良くわかった。

また、「長崎サミット」で採り上げられたにも関わらず、この件が何も動かないのであれば、正直言って「長崎サミット」を開催する意味は無いと、私は感じる。