2020年2月19日水曜日

新長崎駅へのアクセス問題は副知事の力で改善へ

ここの話の続きの動きが出た。

新幹線開業に向け長崎駅周辺の交通網を再検討


新長崎駅の駅舎まで現在の駅前電停から歩かせる、というのが長崎市の方針だったが、平田副知事が動いたことにより、動く歩道付きの歩行者デッキで結ぶという方向になったようだ。

さらに、バスターミナルも現在地で改修するという。今の長崎市の計画では、待合室だけ室内でバスへの乗り降りは路上で行うことになっていた。それをちゃんと建物の中でできるようにするようだ。

平田副知事がやる気を見せていたのは知っていたが、まさかバスターミナルまでとは思わなかった。

あとは改札口を県庁舎側にも作らせられればいい形にはなるのだが、これはJRが新アミュプラザへ人を誘導したいということで難しいと、直接お会いした時に副知事本人が話していた。

我々のような市民団体がいくら動いても全く無駄だったことが、権力を持っている人がやれば、あっさりと動いた。副知事は選挙で選ばれた人ではないが、まともな思考力と実行力を持った人を権力者に据えないと地域はダメになるという、いい事例になりそうだ。

しかし田上市長は何を考えていたのだろうか。そういう人を市長に選んだのは市民なんだから、結果に何を言っても始まらない。

2020年2月7日金曜日

長崎市の新ホールは熊本城ホールを見習いグランドホテル跡地に

長崎市が建設する文化ホールの場所が、県庁舎跡地ではなく現市役所跡地になることが決まった。

文化芸術ホールは市役所跡地 長崎市長表明、県庁跡を断念


私は4年以上前から県庁舎跡地は公園にすべきだと主張していたので、何を今さら、という感じである。

このことに限らず、長崎市のまちづくりにはグランドデザインがないことが最大の問題である。とにかく場当たり的で、その時に空いている公共の土地を使おうという発想しかない。

本来まちづくりというものは、計画区域全体の施設配置を考えた上で、個々の計画に落とし込んで行かないといけない。もちろん、公共用地だけでなく民間の土地も合わせて計画に入れて考える必要がある。

計画を作る際にも、行政にだけ任せるのではなく、土地所有者も含めた民間人が一緒になって考えないといけないのは当然のことである。この点において長崎は民間サイドにも大きな問題があると思っている。以前指摘したように、商店街の人達は県庁舎や市庁舎については行政に対して色々文句を言うくせに、グランドホテル跡地は長年放置したままだ。グランドホテルは民間の土地なのだから、本気でまちづくりを考えるのであれば、役所に頼るのではなく民間対民間で解決策を考えるのが筋なのである。

今さらの話にはなるのだが、考え方として新ホールをグランドホテル跡地に建設する枠組みについて提案したい。その際に、先日完成した熊本城ホールが参考になる。

熊本城ホールは、元々民間の施設である熊本交通センターがあった場所に、新たなバスターミナルとともに、民間による再開発事業として建設された。それを完成後にホールの部分だけ熊本市が買い取ったのである。


熊本城ホールについて


このホールは熊本市の中心部にあり(熊本駅からは遠い)、一階がバスターミナルであることもあり、大変便利である。私も大ホールのこけら落とし公演だったはずの森高千里コンサートに行った(後日、森高公演の1週間前に山下達郎が入ってこけら落としになった。市長直々に頼んだとか。)が、他所から行くにしてもバスターミナル併設という立地はほんとうに便利であった。

長崎市のホールも、福岡銀行が中心になってグランドホテル跡地を再開発し、バスターミナル併設で建設すればいい。

行政が民間の再開発を後押しするつもりらしいから、ここを最初のケースとして打ち出せばいいと思う。

長崎市が2年連続で転出ワースト1位 民間の再開発を後押しする秘策は


2020年1月25日土曜日

対馬への外国人観光客誘致は、福岡と釜山を結ぶ導線上で考えよう

経済地理学会対馬特別例会での話の内容は書かない、と書いたけど、ちょっとだけ書く。

1月24日付けの新聞に、以下の記事が出ている。

「福岡-釜山」高速船 「日韓以外」利用客3倍を目標に

(毎日新聞へのリンク)

まあ、ね、タイミングが悪かったよね。JR九州が巨大な高速船を博多釜山航路に2020年7月から投入する、という計画があって、今の日韓情勢を考えると、客が乗るはずがないという状況だ。

申し訳ないが、日韓情勢に関係なくこの計画は最初から難しいと私は思っていた。博多−釜山航路を利用する客は、安く海外旅行ができるからという理由が大きく、豪華な船でのクルーズを楽しむという需要は、ほぼ無いからだ。

それでも就航が決まった以上は、搭乗率を上げるためには日韓以外の観光客を乗せないといけない、という事情だ。
同社は長期滞在する傾向がある欧米豪の訪日客に注目。九州と釜山を同じ観光圏と位置づけ、旅行中の周遊先として釜山をアピールして高速船の利用を促す。
欧米豪の観光客に着目するのはいい。しかし、わざわざ博多から釜山を往復するだろうか。それは難しいと思う。


私が対馬の例会で提案したのは、特に欧州客を福岡in、釜山outなどの行程のなかで、対馬を組み込んでもらおうということだ。

対馬には森があり城跡があり神社仏閣も多いと、西洋人に好まれる要素がふんだんにある。熊野古道のような売り方ができれば、西洋人の観光客を集めることも十分可能だが、国土の端にあるという捉え方ではアクセスが悪く観光客誘致では不利である。

そこで、2020年夏ダイヤから就航が決まったフィンエアのヘルシンキ−釜山便を利用して、片道は福岡便、片道は釜山便という使い方を売り込めば、対馬の地理的不利性が解消される。さらにヨーロッパから釜山へのインバウンド客は少ないだろうから、そこは福岡・対馬と釜山が協力することでインバウンド増加を図るようにすればいいのだ。

韓国は仁川のハブ機能を強化する国の航空政策により、長距離便は仁川のみに就航させてきた。釜山にとってその政策を越える待望のヨーロッパ便になる。この路線を維持するためにもインバウンド増加は必須条件なのだ。福岡へのフィンエアー便にしても、インバウンドが弱い関係から夏季のみの就航に留まっているので、釜山と協力してインバウンド増加を目指すのは、お互いにとって悪い話ではない。

JR九州も、福岡から釜山を往復することを売り込むのではなく、片道利用を推進する方向で行く方が現実的である。


ところでアジアからのLCC路線は、九州の就航地として最初に福岡、次に鹿児島を選ぶ傾向がある。この事実を聞いて「鹿児島って人気があるのか」と思うだろうか。申し訳ないが、観光地としての人気は鹿児島より長崎の方が高い。それでも長崎ではなく鹿児島を選ぶのは、片道福岡、片道鹿児島の利用で、九州を縦断する観光客が見込めるからだ。

九州内の移動手段としてJR九州とバス会社は、いずれも九州乗り放題チケットを販売している。こういうチケットを利用し九州を縦断したいと考える海外客が多くなるのは、容易に理解できる。

香港と台湾は、日本へのリピーターが多いことで有名だ。LCCを使って年に何回も日本を訪れる人が多い。そして、香港と台湾からのLCCは、福岡と釜山の両方に就航しているのだ。

そうなると、福岡と釜山を航路で結んでいるJR九州が、福岡釜山移動に加え対馬周遊が可能な割引チケットを機内で売ったりすれば、アジアから対馬への旅行客は一気に増えるだろう。


ながさき地域政策研究所が作成した「対馬観光再生ビジョン提言書」には、福岡空港を経由してアジア諸国からの観光客を呼び込むと書かれているそうだ。しかし、福岡からわざわざ対馬を往復しようというアジアの観光客がどれだけいるのだろうか。それよりは福岡と釜山を移動する途中で対馬を訪れてもらうほうが、可能性は遥かに高い。

行政が関わると、国をまたいだ施策を取るは難しい。しかしこのケースならばJR九州が1社で対応できる話だ。現在LCCの香港エクスプレス機内でJR九州乗り放題チケットを販売していて、かなり売れている。こういう取り組みを博多−比田勝−釜山航路でも行えばいいのだ。

2020年1月24日金曜日

「対馬学フォーラム」の成果について考える

2019年12月8日に「対馬学フォーラム2019」が開催された。
対馬に関するさまざまな分野の研究発表会であるが、この内容が素晴らしすぎて、本当にびっくりしている。

何が素晴らしいかというと、大学の研究者だけでなく、地元の小中高生も発表していることである。発表しているということは、当然事前に研究をしている。

郷土についての研究を小さい頃から行うということは、郷土愛を育む上でこのうえない効果を生む。私のように大学で研究者になるための教育を受けてきた人間からすると、小さいうちから研究活動を行うことは、本当に素晴らしいことだと感じる。

但し、手放しで喜べない部分もある。下手に研究に興味を持ってしまうと、長崎県の現状であれば県外に優秀な人材を放出する結果につながってしまうからだ。

教育と就職・就業は、本来密接に関わるべきものだ。しかし長崎県では大きく分離している。高校では「いい大学」に入れることだけを考えていて、その後その人材をどう長崎に戻すのか、という視点が完全に欠落しているのだ。


研究に興味を持った高校生が出てくるのであれば、民間で研究をできる環境が乏しい以上、県が研究に携われる職場を用意しないといけない。現状県内にほとんどそういう職場がないから、学歴が高くなるほど、県内で職を見つけるのは困難になる。私も今でも相当苦労しているし、高学歴者を大事に扱わない長崎県の実状をここまで見せつけられると、早く県外に脱出したいと思っているのが現実だ。そもそも高学歴者を大事に扱え、と言うのがふざけていると言われるし、学歴が高ければ高い程、頭を下げないと生きていけないのが長崎の社会だ。だから頭を下げるのが嫌いな私は長崎では生きていけない。

ところで対馬で研究に興味を持った場合の就職先としては、市の学芸員しかない。果たして対馬市に学芸員のポストはいくつあるのか?

それ以外には、本来であれば高校の先生が最適である。

ところが長崎県の高校は、補習や部活に忙しすぎて、先生が独自に研究活動を行うのは困難である。そもそも先生に研究活動をさせようという空気が、多分今の長崎県教育委員会の中には無いはずだ。

私も高校の先生になろうかと考えたことがあるが、あまりに長崎県の高校はブラックすぎるから、採用試験を受ける気にもならなかった。朝から夜まで働かされて、夏休みも1週間位しかない。東京都立高校の先生の労働時間を見ると、冗談じゃないが長崎県の教員になろうという気にはならないし、ここを読んだ長崎県の教育関係者は、「そういう自分のことばっかり言うような人は、長崎県の教員になって欲しくない」と考えるはずだ。

また多すぎる強制補習授業の悪影響は、研究をしたい高校生の活動にも悪影響を与える。長崎県の教育を受けてきた私からすると、よくまあ学校で朝から晩まで補習だ部活だと拘束された上で、「対馬学フォーラム」の発表のための研究活動をできる高校生がいるもんだなぁと、感心せざるを得ない。

そもそも何のために補習授業をするのか。大学受験のためではなく、完全に先生が生徒を管理するための手段にしかなっていない。

今どき学科試験だけで大学入試を通過しているのは、入学者の半分しかいない。あとは推薦入試・AO入試などで入る。どう考えても補習授業を受けてペーパーテスト対策の勉強をするより地域に関する研究をした方が、入試には有利になるのが今の時代なのだ。

そうであれば、ペーパーテスト中心の受験を目指す人だけが補習授業を受ければいいのだが、個性を認めない長崎県の教育界でそれは許されない。全員同じことをしないといけないのだ。もちろん、同じことをさせた方が先生が管理しやすい、というのが根底にある。推薦で大学入学が決まった人まで「和を乱さないため」に補習授業を受けさせられるような状況なのである。

高校の先生として研究ができる人を採用しようという気すら、長崎県側にない。オリンピック代表になれば教員採用試験の一次試験免除になるという制度はあっても、博士の学位を持っていれば一次試験免除という制度はない。学術よりスポーツのほうが優先されるのが長崎県の教育界なのだ。私も一次試験免除になるのであれば、間違いなく長崎県の採用試験を受けていた。実際に先生になるかどうかは別にしても。


仮に研究できる人間を高校教諭として採用したとしても、異動があるから対馬にずっと居られないということは、今の制度では避けられない。しかし、これも制度を変えれば済むことだ。異動を少なくするのは私も反対だが、中学と高校を両方異動するように制度を変えれば、対馬で長期間勤務することが可能になる。今でも採用試験の段階で中学と高校を一括採用している都府県は存在するので、長崎県でもできないことはない。


「対馬学フォーラム」の開催などで対馬市がどれだけ頑張っても、教育職の人事は県なので、どうしようもない。だからこそ、県と市町が一体になって、就業対策を立てないといけないのだ。

2019年12月27日金曜日

続・経済地理学会対馬特別例会を終えて

前回の続き。
今回は、ただの愚痴。

長崎新聞に以下の記事が掲載されていた。

韓国人客激減を受け、対馬への誘客「多角化を」

対馬観光のあり方検討会が市長に提言


私もこの提言書が出ることは知っていた。
この提言書が出る前に我々の例会は行われた。言うまでもないが、提言書の中身は我々の例会時には誰も見ていない。

そして当然、この提言書を作るために、多額の予算が投入されている。
我々は、タダ。私も相当の手出しは、している。

予算をかけた以上は、我々の提言より遥かに価値があるものなのでしょうね。
私は、県と市に頭を下げて登壇者を出してもらって、各方面にお金と気を使いまくり。

果たして何のためにそんなことをやったのかと、正直思う。
裕福な人が自分の名誉のためにやるのなら是非やって欲しい。私は決して裕福ではない。菊森理事長の1/5程度の年収しかない。多分。

2019年12月25日水曜日

経済地理学会対馬特別例会を終えて

12月21日に、経済地理学会西南支部・関西支部合同対馬特別例会を開催した。

プログラムは以下の通り
13:30 開場
14:00 開会
14:05〜14:45 講演1 長崎県と対馬市の周辺地域性と雇用問題
          前田 陽次郎(長崎農産品貿易株式会社)
14:50〜15:30 講演2 ボーダースタディーズから見た対馬の韓国人観光
          花松 泰倫(九州国際大学特任准教授)
休憩
15:45〜17:15 シンポジウム 国境の島・対馬の未来を考える
     座長 高木彰彦(九州大学教授)
パネリスト    中崎謙司(長崎県文化観光国際部長)
        桐谷雅宣(対馬市副市長)
        花松泰倫(九州国際大学)
        松井健一郎(長崎県立大学地域創造学部3年)
        池田千恵子(大阪成蹊大学)

対馬の観光客急減を受けて、私が1人でも多くの人を対馬に呼びたい、ということで、開催を企てたものだ。あくまで支部例会だが、参加者は全国から募って、実際に北海道や東北からも参加して頂けた。

企画した人間が講演するのも良くないのだが、誰も止めないし、たまにはいいかと思い、話をさせて頂いた。

参加者は非会員も含めてちょうど50人。本当は会員だけで50人集めたかったのだが、皆さんからは良く集めたと褒めて頂いたので、良しとしよう。

長崎県文化観光国際部長や対馬市副市長にまで登壇して頂き、ほんとうに感謝している。


で、話の中身はここでは書かない。1つだけ言いたいこと。

長崎には大学の先生が沢山いるんだから、他の人もこういう会を対馬で開くことは可能じゃないんですか?って、正直思う。

全国大会を開くのは色々手間と時間がかかるけど、今回のように支部例会クラスなら、幹事がちょっと頑張れば、すぐに出来るんじゃないかな。

なんで八百屋ができて、税金から給料を貰っている大学教員ができないんだろうか、と、強く言いたい。今回は、それだけ。

2019年10月6日日曜日

市職員は職員である前に市民であれ

今日、『令和時代の「駐車場-駐車場が街を変える-』というイベントに参加した。

駐車場云々の話よりは、元アメリカ・ポートランド市職員の山崎満広さんが登壇されることに、非常に興味があった。

ポートランドという都市は、路面電車界隈では有名な所である。一度は廃止した路面電車を、街づくりの中核として復活させ、都市再生を果たした。LRTの先進例としては、アメリカのポートランドかフランスのストラスブールか、と言われる都市である。そういう市の元職員が来られる、ということで、とても興味があった。

本来ならシェアリングエコノミーとそれを支えるIT技術が今日の話題の中心になるはずだった。それを私が発言したばかりに、LRTとまちづくりの方向にディスカッションの方向をねじまげてしまった。その意味では申し訳なかったが、聴衆の中に県・市の職員や商店街の方々もいたので、それはそれで意義ある議論ができたのだろうと、勝手に思っている。


会が終わった後にも山崎さんとお話ししたが、日本とアメリカの役所の大きな違いが、アメリカ(ポートランド)の職員は、職員である前に市民であり、市民として暮らしやすい街はどんな形か、ということを第一に考えている、ということだ。日本は、市民と職員の間に壁がある。職員は職員としての立場からしか話をしない。

私もこのことは本当に日本に変わって欲しいと思う。去年さんざん市に対して訴えてきた駅周辺事業も、駅から電停まであれだけ歩かされるというのは、市職員だって市民として不便でしょ。じゃ何で市民にとって便利なものを作ろうとしないんのだろうか。

もう、何を言っても無駄だということがわかったから、私はこのことから手を引くことにした。

山崎さんも、「行く所まで行かないと、わからないんでしょうね」とおっしゃった。私は、もう長崎市は行く所まで行きかけていると思っている。来年3月になれば、不便な長崎駅舎がオープンする。さすがにその時には、市民も市職員も、これではいけないとわかるのではないか、と思っている。但し、いけないとわかっても、変えようとはしないんだろうな、というのが、正直な気持ちである。

私も一市民として、変わらない市民の意識を変えるよう動くよりは、早く長崎から出て行く方が精神的に遥かに楽だと思っている。こんな状況じゃ、長崎市の人口流出が止まるはずは、ない。