長崎駅周辺の区画整理事業にからんで計画中のMICE施設に関して、反対意見が出ている。
そもそもMICE施設とは何なのか、ということが実感を持てないし、作った所で需要があるのだろうか、という疑問も多いようだ。
私はいくつかの学会に所属しており、学術大会にも継続的に参加しているので、その辺は普通の人よりは事情に詳しいはずである。
需要があるのか、似たような施設が各地に建設される中で、長崎が勝てるのか、という点について私見を述べたい。
先日、とある学会の全国大会が長崎市内で開催された。私も参加したのだが、実行委員の方の話だと、「予想したよりかなり参加者は多かった」とのことだった。全国大会は毎年各地で行われているので、これは、「長崎で開催される学会は、他都市より遥かに多くの参加者を集められる」ということである。
実際に参加している人の様子を見ると、確かに他都市で開催されるいろんな学会とは雰囲気が違った。まず、カステラを持っている人が多い。カバンの中はお土産のカステラでいっぱいだ、なんて話も聞こえる。持ってなくても、これから帰りにどこでカステラを買って帰る、なんて話は、みんながしていた。
こういうことは、他所で開催される学会では見かけない状況である。
少なくとも長崎ではカステラを買う、という魅力がある。その他さまざまな要因が合さって、長崎で学会が開催されるのなら、参加してみよう、と思う人は、結構いると感じた。当然、主催者側は参加者にとって魅力がある開催地で学会を開催したいと考えるのだから、「他都市との競争」という点では、長崎は相当優位に立っているのだ。
また、これだけみんながカステラを買って帰ってくれるのだから、経済波及効果も、他の都市より遥かに高いはずだ。もちろん、波及効果が福砂屋にばかり及ぶ、という見方もあろうが、そこは他の業者が頑張ればいいことだ。
長崎に住んでいる人は、外から見ると、長崎がどれだけ魅力のある所なのかがわかりにくい。実際には、住民が思っている以上に魅力のある都市だと外からは見られている、というのが、私の今までに受けている印象である。別項で書いたが、長崎はクルーズ船の寄港地として、現在日本一魅力のある港になっている。長崎市民はその事実を、どれだけ客観的に理解しているのだろうか。それと同じことで、学会の開催地としても、福岡には劣るだろうが、その他の都市に比べると、遥かに競争力を持っている都市なのだ。
MICE施設に反対する理由として、「他の都市に勝てない」というのは、外した方がいい、というのが、私の印象である。
2014年8月21日木曜日
2011年11月27日日曜日
魚市跡地には上海航路のターミナル整備を
県庁舎移転がいよいよ動きそうだが。
移転について防災面で不安だという声もあるが、それ以上に、移転先である魚市跡地は上海航路のターミナルとして整備すべきであるから、私はここに移転するのは絶対にやめた方がいいと考える。
上海航路は定期航路として開設される。
ところが、この上海航路の利用岸壁が、クルーズ船接岸時には、松が枝埠頭ではなく柳埠頭になる、らしい。
そもそも、定期航路であるのに、その接岸岸壁が日によって違うというのは、どうであろう。しかも、松が枝より遥かに不便な柳に着いて、どうするつもりだろう。県は、本当に上海航路を発展させようという気持ちがあるのかと、正直疑問に思う。
上海航路で利用される船は貨客船である。貨物も積める。日本と中国との物流量は増えているので、船の運営会社としては、収益をあげるために、貨物も運びたいだろう。しかし、松が枝では貨物の積み下ろしをするのはまず不可能である。かといって、貨物を優先させて柳を日常的に使うとなれば、現状では貨物より重要な旅客に対して、ものすごく不便になる。
これが魚市跡地にターミナルを作るとなると、一気に解決する。貨物の積み下ろしスペースを作ることは可能だし、長崎駅のすぐそばなので、旅客にとっても、ものすごく便利である。
また、新幹線の誘致に関して、「上海航路とつながる」というのは、国に対して大きなアピール点になる。魚市跡地に上海航路が就航すれば、新幹線とのアクセスも抜群だし、逆に言えば、柳を使うなんてことをすると、新幹線との接続なんて、本気で考えてないと思わざるを得ない。
ところで、上海航路を運行するHISグループは、航路開設の最大の目的を、中国からの観光客をハウステンボスに呼び込むことに置いているだろう。そうなると、長崎港よりも、佐世保港に定期航路を開設した方が便利なのは明白である。現在は、佐世保港に施設が整っていないから、暫定的に長崎港を利用しているだけだ。当然、佐世保港も国際航路が就航できるような体勢を整えるべく、頑張っている。
長崎港と佐世保港では、港湾管理者が違う。長崎港は長崎県で、佐世保港は佐世保市である。となると、長崎港がのんびりとしている間に、佐世保港が上海航路を長崎から奪い取ろうと考えるのは、当然のことである。長崎港がのんびりしている間に、一気に佐世保港が攻勢をかけ、HIS側が佐世保を選ぶ、ということになるのは、かなりの確率で考えられることである。
もちろん、それは佐世保にとってはいいことであるので、長崎がのんびりすることを本心では望んでいるのかもしれない。しかし、全く個人的な意見であるが、私は上海航路は長崎港から出て欲しいので、長崎県も、HISに選んでもらえるように、しっかりと長崎県は長崎港を整備してもらいたい。
HIS側は県に対して、ハード面の整備を望んでいるらしいという話も聞く。県も、本当に上海航路を大きく伸ばしたいと思っているのなら、HISに逃げられないように、長崎港の港湾管理者として、しっかりとした施設を整備して欲しい。上海航路を柳埠頭に接岸させるなんて、本当に航路の重要性を考えるのであれば、絶対に考えられない発想のはずである。
移転について防災面で不安だという声もあるが、それ以上に、移転先である魚市跡地は上海航路のターミナルとして整備すべきであるから、私はここに移転するのは絶対にやめた方がいいと考える。
上海航路は定期航路として開設される。
ところが、この上海航路の利用岸壁が、クルーズ船接岸時には、松が枝埠頭ではなく柳埠頭になる、らしい。
そもそも、定期航路であるのに、その接岸岸壁が日によって違うというのは、どうであろう。しかも、松が枝より遥かに不便な柳に着いて、どうするつもりだろう。県は、本当に上海航路を発展させようという気持ちがあるのかと、正直疑問に思う。
上海航路で利用される船は貨客船である。貨物も積める。日本と中国との物流量は増えているので、船の運営会社としては、収益をあげるために、貨物も運びたいだろう。しかし、松が枝では貨物の積み下ろしをするのはまず不可能である。かといって、貨物を優先させて柳を日常的に使うとなれば、現状では貨物より重要な旅客に対して、ものすごく不便になる。
これが魚市跡地にターミナルを作るとなると、一気に解決する。貨物の積み下ろしスペースを作ることは可能だし、長崎駅のすぐそばなので、旅客にとっても、ものすごく便利である。
また、新幹線の誘致に関して、「上海航路とつながる」というのは、国に対して大きなアピール点になる。魚市跡地に上海航路が就航すれば、新幹線とのアクセスも抜群だし、逆に言えば、柳を使うなんてことをすると、新幹線との接続なんて、本気で考えてないと思わざるを得ない。
ところで、上海航路を運行するHISグループは、航路開設の最大の目的を、中国からの観光客をハウステンボスに呼び込むことに置いているだろう。そうなると、長崎港よりも、佐世保港に定期航路を開設した方が便利なのは明白である。現在は、佐世保港に施設が整っていないから、暫定的に長崎港を利用しているだけだ。当然、佐世保港も国際航路が就航できるような体勢を整えるべく、頑張っている。
長崎港と佐世保港では、港湾管理者が違う。長崎港は長崎県で、佐世保港は佐世保市である。となると、長崎港がのんびりとしている間に、佐世保港が上海航路を長崎から奪い取ろうと考えるのは、当然のことである。長崎港がのんびりしている間に、一気に佐世保港が攻勢をかけ、HIS側が佐世保を選ぶ、ということになるのは、かなりの確率で考えられることである。
もちろん、それは佐世保にとってはいいことであるので、長崎がのんびりすることを本心では望んでいるのかもしれない。しかし、全く個人的な意見であるが、私は上海航路は長崎港から出て欲しいので、長崎県も、HISに選んでもらえるように、しっかりと長崎県は長崎港を整備してもらいたい。
HIS側は県に対して、ハード面の整備を望んでいるらしいという話も聞く。県も、本当に上海航路を大きく伸ばしたいと思っているのなら、HISに逃げられないように、長崎港の港湾管理者として、しっかりとした施設を整備して欲しい。上海航路を柳埠頭に接岸させるなんて、本当に航路の重要性を考えるのであれば、絶対に考えられない発想のはずである。
2011年11月16日水曜日
新長崎県立図書館は大村市へ
県立図書館の老朽化に伴い、改築してどこに新図書館を作るのかということに関して、長崎市と大村市で誘致合戦が行われている。
大村市の言い分は、県土の中央に位置するので、県全体からのアクセスが便利だ、という点、長崎市は、長崎研究の拠点として、研究者が多くいる長崎市に立地すべきだ、という点が、それぞれ最大の主張のようだ。
実際に県立図書館がどの程度研究拠点として活用されているのか私は全く知らないのだが、一応、大学に長い間身を置いた研究者としての視点から、長崎市立地の必要性を考えてみる。
正直言って、県立図書館でしか得られない資料を活用するために、年に5回以上県立図書館を利用しているという長崎市在住の研究者は、せいぜい1桁じゃないかな、と思う。これは全く現実と外れた数字かもしれないが、その辺について、長崎市立地を主張する人には、是非数字を出して欲しい。
それで、その人たちが長崎市に住んでいるからといって、図書館が長崎市に立地する必要があるか、といえば、かなり疑問である。例えば週に1回位図書館に行くとしても、長崎から大村に行く、というのは、研究者だったら普通にできることだ。というか、その位やらなくて研究者を名乗るな、と言いたい。現実には毎日大村から長崎まで通勤通学で通っている人も沢山いるんだから、行けないはずはない。
ここからが本題なのだが、長崎研究(もちろんここでの「長崎」とは「長崎市」ではなく「長崎県」だ)を担う人間が長崎市に集中するのか、集中させるべきなのか、ということを考えなくてはならない。
まず、長崎市周辺の大学で、長崎研究の拠点を作ろうと思った所で、それだけのポストを用意することができるのか。まず無理でしょう。そんなポストがあるのなら、是非私をどこかの大学で雇って下さい(苦笑)。今ある研究ポストの中で議論をするのが現実的である。
そして、長崎県の研究をする人間を増やしたいのか、となれば、当然増やしたい、となるだろう。では、具体的にどういうポストの人が研究者として増やせるのか。これも現実でいえば、公務員(学芸員・高校教諭など)しかないと思う。それから、未来の研究者として、大学生も考慮に入れる必要がある。
まず大学生からいえば、県内の大学は長崎市内だけにあるのではない。佐世保にもある。社会人より学生の方が交通弱者なので、アクセスのいい場所に図書館があった方がいいのは、議論の余地がない。となると、JR大村駅近辺が最適である。
次に公務員。これは県内全域に勤務・在住している。こういう人たちの研究環境を考えてあげれば、やはり県全体からのアクセスが便利な場所に図書館を作るべきだ。例えばの話、長崎市内の高校に勤務していた先生が佐世保に転勤になったとする。これで極端に図書館へのアクセスが悪くなって、研究を継続させることが困難になる、という事態は、容易に想像できる。
正直言って、大学の先生は、多少アクセスが悪くても無理してでも通って欲しいと思う。他の仕事に就く人たちの方を向いて、アクセスを考えるべきだろう。
もう1ついえば、一支国博物館との連携も考えるべきだと思う。そうなると、空港がある大村市に新図書館を立地させた方が絶対にいい。
--------
私は以前東京に住んでいた時、東京の人は何か作る時に、「東京に作って当然」という言い方をすることをよく感じた。
地方出身者からすれば、「それは東京以外の場所に作るべきじゃないかな?」と思うようなものでも、「東京ありき」という風潮があって、ちょっとおかしいんじゃないかな、と感じていた。
今は長崎市に住んでいる。長崎市も県都であるので、立場は逆になった。上のことの裏返しで、「ほんとうに長崎市に必要か?」ということを、つねづね考えないといけないと思っている。
県庁舎にしても県立図書館にしても、「ほんとうに長崎市に必要なのか?」ということは強く意識するようにしているが、こと県立図書館に関しては、大村市立地の方が絶対にいいという気がする。
大村市の言い分は、県土の中央に位置するので、県全体からのアクセスが便利だ、という点、長崎市は、長崎研究の拠点として、研究者が多くいる長崎市に立地すべきだ、という点が、それぞれ最大の主張のようだ。
実際に県立図書館がどの程度研究拠点として活用されているのか私は全く知らないのだが、一応、大学に長い間身を置いた研究者としての視点から、長崎市立地の必要性を考えてみる。
正直言って、県立図書館でしか得られない資料を活用するために、年に5回以上県立図書館を利用しているという長崎市在住の研究者は、せいぜい1桁じゃないかな、と思う。これは全く現実と外れた数字かもしれないが、その辺について、長崎市立地を主張する人には、是非数字を出して欲しい。
それで、その人たちが長崎市に住んでいるからといって、図書館が長崎市に立地する必要があるか、といえば、かなり疑問である。例えば週に1回位図書館に行くとしても、長崎から大村に行く、というのは、研究者だったら普通にできることだ。というか、その位やらなくて研究者を名乗るな、と言いたい。現実には毎日大村から長崎まで通勤通学で通っている人も沢山いるんだから、行けないはずはない。
ここからが本題なのだが、長崎研究(もちろんここでの「長崎」とは「長崎市」ではなく「長崎県」だ)を担う人間が長崎市に集中するのか、集中させるべきなのか、ということを考えなくてはならない。
まず、長崎市周辺の大学で、長崎研究の拠点を作ろうと思った所で、それだけのポストを用意することができるのか。まず無理でしょう。そんなポストがあるのなら、是非私をどこかの大学で雇って下さい(苦笑)。今ある研究ポストの中で議論をするのが現実的である。
そして、長崎県の研究をする人間を増やしたいのか、となれば、当然増やしたい、となるだろう。では、具体的にどういうポストの人が研究者として増やせるのか。これも現実でいえば、公務員(学芸員・高校教諭など)しかないと思う。それから、未来の研究者として、大学生も考慮に入れる必要がある。
まず大学生からいえば、県内の大学は長崎市内だけにあるのではない。佐世保にもある。社会人より学生の方が交通弱者なので、アクセスのいい場所に図書館があった方がいいのは、議論の余地がない。となると、JR大村駅近辺が最適である。
次に公務員。これは県内全域に勤務・在住している。こういう人たちの研究環境を考えてあげれば、やはり県全体からのアクセスが便利な場所に図書館を作るべきだ。例えばの話、長崎市内の高校に勤務していた先生が佐世保に転勤になったとする。これで極端に図書館へのアクセスが悪くなって、研究を継続させることが困難になる、という事態は、容易に想像できる。
正直言って、大学の先生は、多少アクセスが悪くても無理してでも通って欲しいと思う。他の仕事に就く人たちの方を向いて、アクセスを考えるべきだろう。
もう1ついえば、一支国博物館との連携も考えるべきだと思う。そうなると、空港がある大村市に新図書館を立地させた方が絶対にいい。
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私は以前東京に住んでいた時、東京の人は何か作る時に、「東京に作って当然」という言い方をすることをよく感じた。
地方出身者からすれば、「それは東京以外の場所に作るべきじゃないかな?」と思うようなものでも、「東京ありき」という風潮があって、ちょっとおかしいんじゃないかな、と感じていた。
今は長崎市に住んでいる。長崎市も県都であるので、立場は逆になった。上のことの裏返しで、「ほんとうに長崎市に必要か?」ということを、つねづね考えないといけないと思っている。
県庁舎にしても県立図書館にしても、「ほんとうに長崎市に必要なのか?」ということは強く意識するようにしているが、こと県立図書館に関しては、大村市立地の方が絶対にいいという気がする。
2011年10月24日月曜日
食農資源経済学会長崎大会に参加して(3)
大会では、長崎県農政課長から、長崎県の農業についての説明もあった。
私は以前書いたように、長崎の農業については詳しく知らなかったので、とても有意義だった。
ここで一番興味深かったのは、長崎県の農業は、全国レベルでみても、近年大規模化が進んでいる、ということだった。
県の調査によると、販売金額1,000円以上販売農家の、平成7年と平成17年の数を比較すると、長崎県は142.7%に伸びており、これは全国の都道府県の中で1位である。
また、施設のある農家数は102.7%で3位(3位の県までが増加、ほかは減少)、施設面積では121.9%で2位である。
どちらも、全国平均値は減少している。
私も何となく感じていたことだが、長崎県の農業は国内では、比較的元気である、ということが、数値で現れているといえよう。もともと長崎県は土地条件が悪かったので、近年、それを克服する経営体が育ってきている、と考えられる。
これは長崎に限らず全国共通した話であるが、農業経営の大規模化というのは、着実に進んできている。小規模農家だと経営が成り立たないので、おのずと大規模化していくのは、自然の流れである。
長崎県でも、この流れに乗って、さらなる大規模農家への集約を進める方針だ、ということである。
またちょっとだけTPPの話を持ち出すが、TPPに参加すると、小規模農家が潰れる、といって反対する人が多い。しかし、現実の流れを見ると、TPPの参加如何に関わらず、小規模農家が衰退していくのは、自然なことである。
この自然の流れを無理矢理食い止めようとするのか、さらに加速させようとするのかは、考え方次第である。ただ、「日本では大規模経営はできない」などと、現実の農業経営の流れを見ずに反対だけするのでは、多くの国民の理解を得ることはできないのではないか、と、私は思う。
私は以前書いたように、長崎の農業については詳しく知らなかったので、とても有意義だった。
ここで一番興味深かったのは、長崎県の農業は、全国レベルでみても、近年大規模化が進んでいる、ということだった。
県の調査によると、販売金額1,000円以上販売農家の、平成7年と平成17年の数を比較すると、長崎県は142.7%に伸びており、これは全国の都道府県の中で1位である。
また、施設のある農家数は102.7%で3位(3位の県までが増加、ほかは減少)、施設面積では121.9%で2位である。
どちらも、全国平均値は減少している。
私も何となく感じていたことだが、長崎県の農業は国内では、比較的元気である、ということが、数値で現れているといえよう。もともと長崎県は土地条件が悪かったので、近年、それを克服する経営体が育ってきている、と考えられる。
これは長崎に限らず全国共通した話であるが、農業経営の大規模化というのは、着実に進んできている。小規模農家だと経営が成り立たないので、おのずと大規模化していくのは、自然の流れである。
長崎県でも、この流れに乗って、さらなる大規模農家への集約を進める方針だ、ということである。
またちょっとだけTPPの話を持ち出すが、TPPに参加すると、小規模農家が潰れる、といって反対する人が多い。しかし、現実の流れを見ると、TPPの参加如何に関わらず、小規模農家が衰退していくのは、自然なことである。
この自然の流れを無理矢理食い止めようとするのか、さらに加速させようとするのかは、考え方次第である。ただ、「日本では大規模経営はできない」などと、現実の農業経営の流れを見ずに反対だけするのでは、多くの国民の理解を得ることはできないのではないか、と、私は思う。
2011年9月27日火曜日
食農資源経済学会長崎大会に参加して(2)
2日目の議論から。
2日目の共通テーマは、『国際環境変化の下での地域農政のあり方』だった。
はっきり書いてはいないけど、明らかにTPP対策のテーマだろう。
報告は4人。そのテーマだけ書くと、
「国際環境変化の下での農業経営戦略と地域農政」
「次期EU共通農業政策(CAP)の方向性」
「韓・米FTAの締結と韓国農業の対応」
「ながさき農林業・農山村活性化計画について」
4人目だけは長崎県の話だが、全体を通して、TPP対応の議論であることは間違いない。
こうした国際的な対策を考える機会を長崎で作って頂いたことに対して、学会の方々には感謝する。
そもそも、TPPの賛成や反対は別にして、導入したらどうなるかという議論をするのは、本来重要なことのはずである。しかし、特にマスコミでは、賛成ありき、反対ありきの、結果ありきから導き出された理由ばかりが語られる。
もちろん、研究者レベルや(多分)高級官僚の方々は、TPPの影響に関する議論は、沢山やっている。しかし、長崎のような日本の端に住んでいると、こうした議論に接する機会は、ほとんど無い。
私も、東京大学という組織内部にいた後、長崎に戻ってきて、長崎で一般人をやってみると、いかに中央の情報が入ってこなくなるかということを痛感した。
前置きはさておき、私が今回の報告で特に注目したことを書きたい。
まずはEUの農業政策についてである。
国際的な議論がどう進んでいるかがわからないと、何故TPPの議論とEUの農政が関係してくるのかは理解しずらいだろう。EUの農政が重要なのは、ウルグアイラウンドの合意に遡る。
ものすごく大雑把な話をするが、ウルグアイラウンド当時の世界の貿易は、日本・アメリカ・EUが中心となっていた。そして、この3者が国際貿易のルールを作る主役であった。
こと農業に関していえば、アメリカと日本・EUの政策が対決することになる。というより、日本にとって、アメリカの農業よりEUの農業の方が親和性が高い。となると、日本がEUと組んで、農村保護的なルールを作って主導権を取れれば、アメリカを押しきれる、ということだ。
ウルグアイラウンドの時代は、日本国内の雰囲気からすると、自分たちが国際ルールを作る主体になる、という気持ちは希薄であった。国際ルールというのは、どこかで定められたものを日本が受け入れる、という感覚だった。
そして、ウルグアイラウンド締結後、実際に動いてみると、アメリカやEUが「国際ルール」として公平そうなきまりを作っていても、中身は自国に有利なものを巧みに折り込んでいるということがわかった。日本だけが損をした、と言っても過言ではないような状況だった。
これで日本は学習した。以後国際ルールができる時は、きちんと自国に有利な条件を、相手を納得させながら折り込むことが必要だ、ということを。そして、「ルール作りに参加することが重要だ」ということを。ここが重要。そもそも、日本はルール作りに参加する、という意識が希薄だったのだ。再度書くが、国際ルールというものは、自ら作るものではなく、できたものを受け入れる、という感覚だった。
ウルグアイラウンドの合意後、日本の農業経済学研究者は、EUの農業政策を学ぶことに勢力を注いだ。先に書いた通り、EUの政策は日本の農業政策と親和性が高い。そして、EUの政策をベースにすれば、以後の国際交渉でも、日本に有利なルールを作ることができるからだ。
こうして生まれた政策が、中山間地域等直接支払制度であり、農家への個別所得補償である。
東京にいた頃には熱心に勉強していたEUの農政であるが、長崎に来てからはとんとご無沙汰していた。それが今回話を聞く機会ができて、非常に嬉しかった。
そして、今回の講演によると、EUの共通農業政策は、確実に進歩している。当然といえば当然だが、時代の変化に応じて、適切な政策を作るのは、ごく当たり前のことである。
翻って日本の農政はどうだろうか。上に中山間地域等直接支払制度のことを書いたが、そうした変化はごく一部。基本的には、ウルグアイラウンド締結当時から、何も変わっていない。6兆円以上も投じられたウルグアイラウンド対策費が、日本農業にほとんど変化を与えなかったのは、周知の通りである。やはり、日本は何も学習していないと言わざるを得ない。
TPP反対を叫ぶのも結構である。しかし、そうした外的変化に関係なく、日本の農業を取り巻く環境は変わっている。その変化に対応した農業政策を考えることもなく、単に現状維持を叫ぶことに、何の価値があるのだろうか。TPP云々に関係なく、現状に則した農政なり農業補助の方向を、もっと積極的に打ち出す必要があるのではないだろうか。
最後に重要なことだから、もう一度書く。
国際的なルール作りには、ルールを作る段階から参加しないと不利になる。日本ほどの大国なのであるから、国際ルールはできたものを受け入れるのではなく、ルールを作る段階から参加してしかるべきなのである。TPPに関してもそう。できてもいないルールを受け入れるかどうかで、賛成反対なんて言うのはナンセンス。まずルール作りに参加しないと始まらない。そこで自国にとって不利なルールしかできなそうなら、その時点で降りればいいことである。そこをしっかり理解しなければならない。
2日目の共通テーマは、『国際環境変化の下での地域農政のあり方』だった。
はっきり書いてはいないけど、明らかにTPP対策のテーマだろう。
報告は4人。そのテーマだけ書くと、
「国際環境変化の下での農業経営戦略と地域農政」
「次期EU共通農業政策(CAP)の方向性」
「韓・米FTAの締結と韓国農業の対応」
「ながさき農林業・農山村活性化計画について」
4人目だけは長崎県の話だが、全体を通して、TPP対応の議論であることは間違いない。
こうした国際的な対策を考える機会を長崎で作って頂いたことに対して、学会の方々には感謝する。
そもそも、TPPの賛成や反対は別にして、導入したらどうなるかという議論をするのは、本来重要なことのはずである。しかし、特にマスコミでは、賛成ありき、反対ありきの、結果ありきから導き出された理由ばかりが語られる。
もちろん、研究者レベルや(多分)高級官僚の方々は、TPPの影響に関する議論は、沢山やっている。しかし、長崎のような日本の端に住んでいると、こうした議論に接する機会は、ほとんど無い。
私も、東京大学という組織内部にいた後、長崎に戻ってきて、長崎で一般人をやってみると、いかに中央の情報が入ってこなくなるかということを痛感した。
前置きはさておき、私が今回の報告で特に注目したことを書きたい。
まずはEUの農業政策についてである。
国際的な議論がどう進んでいるかがわからないと、何故TPPの議論とEUの農政が関係してくるのかは理解しずらいだろう。EUの農政が重要なのは、ウルグアイラウンドの合意に遡る。
ものすごく大雑把な話をするが、ウルグアイラウンド当時の世界の貿易は、日本・アメリカ・EUが中心となっていた。そして、この3者が国際貿易のルールを作る主役であった。
こと農業に関していえば、アメリカと日本・EUの政策が対決することになる。というより、日本にとって、アメリカの農業よりEUの農業の方が親和性が高い。となると、日本がEUと組んで、農村保護的なルールを作って主導権を取れれば、アメリカを押しきれる、ということだ。
ウルグアイラウンドの時代は、日本国内の雰囲気からすると、自分たちが国際ルールを作る主体になる、という気持ちは希薄であった。国際ルールというのは、どこかで定められたものを日本が受け入れる、という感覚だった。
そして、ウルグアイラウンド締結後、実際に動いてみると、アメリカやEUが「国際ルール」として公平そうなきまりを作っていても、中身は自国に有利なものを巧みに折り込んでいるということがわかった。日本だけが損をした、と言っても過言ではないような状況だった。
これで日本は学習した。以後国際ルールができる時は、きちんと自国に有利な条件を、相手を納得させながら折り込むことが必要だ、ということを。そして、「ルール作りに参加することが重要だ」ということを。ここが重要。そもそも、日本はルール作りに参加する、という意識が希薄だったのだ。再度書くが、国際ルールというものは、自ら作るものではなく、できたものを受け入れる、という感覚だった。
ウルグアイラウンドの合意後、日本の農業経済学研究者は、EUの農業政策を学ぶことに勢力を注いだ。先に書いた通り、EUの政策は日本の農業政策と親和性が高い。そして、EUの政策をベースにすれば、以後の国際交渉でも、日本に有利なルールを作ることができるからだ。
こうして生まれた政策が、中山間地域等直接支払制度であり、農家への個別所得補償である。
東京にいた頃には熱心に勉強していたEUの農政であるが、長崎に来てからはとんとご無沙汰していた。それが今回話を聞く機会ができて、非常に嬉しかった。
そして、今回の講演によると、EUの共通農業政策は、確実に進歩している。当然といえば当然だが、時代の変化に応じて、適切な政策を作るのは、ごく当たり前のことである。
翻って日本の農政はどうだろうか。上に中山間地域等直接支払制度のことを書いたが、そうした変化はごく一部。基本的には、ウルグアイラウンド締結当時から、何も変わっていない。6兆円以上も投じられたウルグアイラウンド対策費が、日本農業にほとんど変化を与えなかったのは、周知の通りである。やはり、日本は何も学習していないと言わざるを得ない。
TPP反対を叫ぶのも結構である。しかし、そうした外的変化に関係なく、日本の農業を取り巻く環境は変わっている。その変化に対応した農業政策を考えることもなく、単に現状維持を叫ぶことに、何の価値があるのだろうか。TPP云々に関係なく、現状に則した農政なり農業補助の方向を、もっと積極的に打ち出す必要があるのではないだろうか。
最後に重要なことだから、もう一度書く。
国際的なルール作りには、ルールを作る段階から参加しないと不利になる。日本ほどの大国なのであるから、国際ルールはできたものを受け入れるのではなく、ルールを作る段階から参加してしかるべきなのである。TPPに関してもそう。できてもいないルールを受け入れるかどうかで、賛成反対なんて言うのはナンセンス。まずルール作りに参加しないと始まらない。そこで自国にとって不利なルールしかできなそうなら、その時点で降りればいいことである。そこをしっかり理解しなければならない。
2011年9月21日水曜日
食農資源経済学会長崎大会に参加して(1)
9月16日から18日まで、食農資源経済学会の長崎大会が長崎市内で開催された。
http://www5e.biglobe.ne.jp/~ksae/
この学会は以前は九州農業経済学会という名称で、現在も年一回九州各県を持ち回りで大会が開催されている。
私も会員なので参加した。本当は全日程参加したかったのだが、他の用事が先に入っていたこともあり、16日と17日の午前中だけの参加となった。
私は一応農業経済学が専門であるのだが、実は主要な調査地域が東北・北海道であったため、長崎の農業についてはほとんど素人である。今回、2日間(どちらも半日なので、実質1日分)しか参加できなかったが、そこでの議論を通じて、ほんの一部ではあるが、長崎の農業がわかった気がする。
まず一日目の内容から。
初日は、県内の元気な農家の方から事例報告があった。
長崎での先進的な農家の方のお話しを聞けて、非常に有意義であった。
この農家の方々の特徴として、みなさん明るい、元気がある、ということが挙げられる。
「暗い暗いと言う産業に未来はない。明るく夢を持たないとダメだ。」
というようなことを、みなさんおっしゃっていた。
まさにその通りだと思う。先行きがない、暗い、厳しい、というようなことばかり言うような産業に、未来があるはずがない。厳しさを強調するのは、「苦しいから補助を下さい」という、後ろ向きの姿勢でしかないのだ。
そして長崎の農業を牽引しているのは、今回発表されたような、明るい農家の方々なんだな、と思った。
それからもう1つ印象的だったのは、「きちんと稼げれば後継者も自然とできるんだ」というお話しだ。
これは私の持論でもある。私が東北や北海道の農村を回っていた時の印象でも、きちんと稼げている農家では、大きな後継者問題は起こっていない。後継者問題を解決する一番の方法は、きちんと稼げる経営体を作ることだ、という私の持論が、さらに裏付けられた気がした。
似たような話の繰り返しになるが、「日本の農業は競争力がないから、国の補助がないと消滅してしまう。」なんていう議論は、あまりに後ろ向きすぎる。強い経営体は、全国各地に、そして長崎にも沢山あるんだから、そんな後ろ向きの議論よりも、強い経営体を広く紹介し、それを広げていく、という方向性がより重要だと感じた。
http://www5e.biglobe.ne.jp/~ksae/
この学会は以前は九州農業経済学会という名称で、現在も年一回九州各県を持ち回りで大会が開催されている。
私も会員なので参加した。本当は全日程参加したかったのだが、他の用事が先に入っていたこともあり、16日と17日の午前中だけの参加となった。
私は一応農業経済学が専門であるのだが、実は主要な調査地域が東北・北海道であったため、長崎の農業についてはほとんど素人である。今回、2日間(どちらも半日なので、実質1日分)しか参加できなかったが、そこでの議論を通じて、ほんの一部ではあるが、長崎の農業がわかった気がする。
まず一日目の内容から。
初日は、県内の元気な農家の方から事例報告があった。
長崎での先進的な農家の方のお話しを聞けて、非常に有意義であった。
この農家の方々の特徴として、みなさん明るい、元気がある、ということが挙げられる。
「暗い暗いと言う産業に未来はない。明るく夢を持たないとダメだ。」
というようなことを、みなさんおっしゃっていた。
まさにその通りだと思う。先行きがない、暗い、厳しい、というようなことばかり言うような産業に、未来があるはずがない。厳しさを強調するのは、「苦しいから補助を下さい」という、後ろ向きの姿勢でしかないのだ。
そして長崎の農業を牽引しているのは、今回発表されたような、明るい農家の方々なんだな、と思った。
それからもう1つ印象的だったのは、「きちんと稼げれば後継者も自然とできるんだ」というお話しだ。
これは私の持論でもある。私が東北や北海道の農村を回っていた時の印象でも、きちんと稼げている農家では、大きな後継者問題は起こっていない。後継者問題を解決する一番の方法は、きちんと稼げる経営体を作ることだ、という私の持論が、さらに裏付けられた気がした。
似たような話の繰り返しになるが、「日本の農業は競争力がないから、国の補助がないと消滅してしまう。」なんていう議論は、あまりに後ろ向きすぎる。強い経営体は、全国各地に、そして長崎にも沢山あるんだから、そんな後ろ向きの議論よりも、強い経営体を広く紹介し、それを広げていく、という方向性がより重要だと感じた。
2011年8月11日木曜日
離島航空路の再編を
長崎県の離島を結ぶ航空路は、住民の貴重な生活の足としての面と、今後増やさないといけない観光客の取り込み手段という面がある。
それを担う役割としてのORCが抱える運行上の問題といえば、次の2つであろう。
・長崎対馬線で、特定の便の乗客が集中し、予約が取りにくい状況にある。
・欠航が多い。
第一の点。もともとこの路線はANA(ANK)のジェット機が運航していたものを、ORCの経営再建のために、ORCに移譲させたものである。
(公式には、ORCの参入発表→ANKの撤退発表、という形だった気はするが。)
ANKからORCに移って、確かに1日の便数は増えたが、もともとこの路線、朝と夕方に乗客が集中する性質がある。便数が増えて1日あたりの座席数は増えても、多くの人が乗ろうと思う時間帯の便の座席数が減っては、積み残しが出るのは当然のことである。特に金曜対馬夜発の便は乗客が多く、2便体制にしても、今でも満席になることがしばしばある。
ここは考え方の問題である。確かにORCの経営問題も重要であろうが、住民の足としての交通政策を考えるべきではなかろうか。
そのためには、対馬発最終便と長崎発始発だけ、ANAのジェット機運航に変えてもらえばいい。ORCとANAのコードシェアを行っている今となっては、これはそんなに難しいことではない。
ANAからすれば、対馬発福岡行き最終便の機材を長崎行き最終便に振り替えればいいだけだ。その機体は長崎で1泊して翌日朝一で対馬へ向かう。
そのかわり、対馬発福岡行き最終便と福岡発対馬行き始発便をORC運航にすればいい。こういう機材繰りの変更をしても、コードシェアを行えば、ANAにとっての不利益はないだろう。
第二の点。
天候不良で欠航になるのは仕方がない部分もある。ところが最近多くなっているのが、機材整備のための欠航。これは、機材が古くなっていることに起因する。
他にもこれから理由を述べるが、もう今のうちから機材の更新を考えた方がいいだろう。
現在ORCが使用している機材は、かの有名なボンバルディア社のQ200というもの。これを置き換えるものとして現在製造されている機材は、ATR42しかない。
現在のQ200よりATR42の最新型ATR-600の方が燃費はいい。この燃料高の時代、経費削減という意味でも、燃費のいい機材に置き換えるのは正しい選択だろう。
ATR-600にした場合のメリットとして、必要とされる滑走路距離の短さから、滑走路が800mしかない上五島空港でも離発着できるという点がある。上五島空港をこのまま利用せずに放置するより、新機種導入で、再度活用した方がいい。今後増やさなければいけない上五島への観光客の足としても、50人前後の乗客を運べるATR42の導入メリットは高い。
そしてATR42-600は、ILSカテゴリーⅢという自動操縦装置に対応している。これを使えば、視界不良による欠航を大幅に減らすことができる。
まあ、上五島空港をILSカテゴリーⅢに対応させるには、どれだけの費用がかかるのかはわからないが、考えてみるのもいいかもしれない。
現実には、新機種導入は費用面などで難しいかもしれない。しかしそこは考えよう。単独で導入することはない。まだ日本でATR42-600を導入予定の航空会社はないが、このサイズの飛行機を運航している会社は、いつか機材更新を検討しなければならない。ここは、ORCと天草エアライン(AMX)、そして日本エアコミュータ(JAC)が共同で2機程度購入して、3社の路線で使い始めればいい。
整備などは福岡のJACで行うようにすれば、ORCもAMXも機材維持にかかるコストを削減できる。
ANAと提携しているORCがJAL系列のJACと提携するのは難しいかもしれないが、そこは何とか知恵を出し合い解決できる方法を探ろう。
それを担う役割としてのORCが抱える運行上の問題といえば、次の2つであろう。
・長崎対馬線で、特定の便の乗客が集中し、予約が取りにくい状況にある。
・欠航が多い。
第一の点。もともとこの路線はANA(ANK)のジェット機が運航していたものを、ORCの経営再建のために、ORCに移譲させたものである。
(公式には、ORCの参入発表→ANKの撤退発表、という形だった気はするが。)
ANKからORCに移って、確かに1日の便数は増えたが、もともとこの路線、朝と夕方に乗客が集中する性質がある。便数が増えて1日あたりの座席数は増えても、多くの人が乗ろうと思う時間帯の便の座席数が減っては、積み残しが出るのは当然のことである。特に金曜対馬夜発の便は乗客が多く、2便体制にしても、今でも満席になることがしばしばある。
ここは考え方の問題である。確かにORCの経営問題も重要であろうが、住民の足としての交通政策を考えるべきではなかろうか。
そのためには、対馬発最終便と長崎発始発だけ、ANAのジェット機運航に変えてもらえばいい。ORCとANAのコードシェアを行っている今となっては、これはそんなに難しいことではない。
ANAからすれば、対馬発福岡行き最終便の機材を長崎行き最終便に振り替えればいいだけだ。その機体は長崎で1泊して翌日朝一で対馬へ向かう。
そのかわり、対馬発福岡行き最終便と福岡発対馬行き始発便をORC運航にすればいい。こういう機材繰りの変更をしても、コードシェアを行えば、ANAにとっての不利益はないだろう。
第二の点。
天候不良で欠航になるのは仕方がない部分もある。ところが最近多くなっているのが、機材整備のための欠航。これは、機材が古くなっていることに起因する。
他にもこれから理由を述べるが、もう今のうちから機材の更新を考えた方がいいだろう。
現在ORCが使用している機材は、かの有名なボンバルディア社のQ200というもの。これを置き換えるものとして現在製造されている機材は、ATR42しかない。
現在のQ200よりATR42の最新型ATR-600の方が燃費はいい。この燃料高の時代、経費削減という意味でも、燃費のいい機材に置き換えるのは正しい選択だろう。
ATR-600にした場合のメリットとして、必要とされる滑走路距離の短さから、滑走路が800mしかない上五島空港でも離発着できるという点がある。上五島空港をこのまま利用せずに放置するより、新機種導入で、再度活用した方がいい。今後増やさなければいけない上五島への観光客の足としても、50人前後の乗客を運べるATR42の導入メリットは高い。
そしてATR42-600は、ILSカテゴリーⅢという自動操縦装置に対応している。これを使えば、視界不良による欠航を大幅に減らすことができる。
まあ、上五島空港をILSカテゴリーⅢに対応させるには、どれだけの費用がかかるのかはわからないが、考えてみるのもいいかもしれない。
現実には、新機種導入は費用面などで難しいかもしれない。しかしそこは考えよう。単独で導入することはない。まだ日本でATR42-600を導入予定の航空会社はないが、このサイズの飛行機を運航している会社は、いつか機材更新を検討しなければならない。ここは、ORCと天草エアライン(AMX)、そして日本エアコミュータ(JAC)が共同で2機程度購入して、3社の路線で使い始めればいい。
整備などは福岡のJACで行うようにすれば、ORCもAMXも機材維持にかかるコストを削減できる。
ANAと提携しているORCがJAL系列のJACと提携するのは難しいかもしれないが、そこは何とか知恵を出し合い解決できる方法を探ろう。
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